道知らざれば禽獣なり

 江戸時代前期に活躍した儒学者・軍学者の山鹿素行が、次の言葉を残している。

 人教えざれば道を知らず。道を知らざれば、すなわち、禽獣より害あり。

「禽獣(鳥や獣)より害あり」が痛烈です。
 人が教える道ですから、人間としての正しい生き方、ということでしょう。
 それを教える人がいなかったり、周りに見本となる人がいなければ、人は動物よりも知恵が回り、能力が高い分だけ、余計、動物よりも世の中に害をもたらす、ということでしょう。
 動物であるなら、飢えをしのぐために、田畑を荒らしたり、人を襲ったりするかもしれません。でも、それが道を踏み外した(そもそも道を知らない)人間なら、盗賊になり、弱者から食べ物・金銭・命などを奪うわけです。
ただ、人間としての正しい生き方・道を子どもたちに教えることは、難しいです。知らせただけで、その道を正しく学んでくれるわけではありません。
 いかに、道を伝えていくのかも、教育者が考え、身につけていかなくてはいけないのでしょう。
 学校現場に身を置く者として、この「道を教える」ことが、年々、困難になってきているように思えます。禽獣より害ある大人が増え続ければ、日本という国もどうなっていくか分からないのですから、心しないといけません。

(2015.7.24)