牛と日本昔話

 年賀状に何を書くか悩みました。牛を辞書で調べても、あまりいいイメージが書かれていません。でも、そうやって考えている内に、ふと昔見た日本昔話を思い出しました。次のような話です。(ホームページから)

日本に伝わる昔話です。
昔々の大昔のある年の暮れのこと、神様が動物たちにお触れを出したそうな。「元日の朝、新年の挨拶に出かけて来い。一番早く来た者から十二番目の者までは、順にそれぞれ一年の間、動物の大将にしてやろう」
動物たちは、おらが一番とて、めいめいが気張って元日が来るのを待っておった。ところが猫は神様のところにいつ行くのか忘れてしまったので、ねずみに訊くと、ねずみはわざと一日遅れの日を教えてやった。猫はねずみが言うのを間に受けて、喜んで帰って行った。
さて元日になると、牛は「おらは歩くのが遅いだで、一足早く出かけるべ」とて夜のうちから支度をし、まだ暗いのに出発した。牛小屋の天井でこれを見ていたねずみは、ぽんと牛の背中に飛び乗った。そんなこととは知らず、牛が神様の御殿に近付いてみると、まだ誰も来ていない。
我こそ一番と喜んで待つうちに門が開いた。とたんに牛の背中からねずみが飛び降り、ちょろちょろっと走って一番になってしまった。それで牛は二番、それから虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鶏、犬、猪の順で着いた。猫は一日遅れで行ったものだから番外で仲間に入れなかった。それでねずみを恨んで、今が今でもねずみを追い回すのだそうな。

 昔見た「まんが日本昔話」と同じ内容でした。
 ここで牛がえらいのは、自分が歩くの遅いということを自覚し、それゆえ、早くに出発したということです。
 まずは己を知ること。
 そして、己に合わせて、対策をとること。
 この2つのことを牛は行ったから、一番に神様のところへ着けたのです。
 結局、牛の背にちゃっかりのっていたねずみに先を越されますが、牛の生き方みたいなものの方が学べます。それに牛がいなければ、ねずみだって1着にはなれなかったのですから。  
 薬でも携帯でも、新しいものを開発するときは、時間とお金がかかります。開発したものを広げるために、またお金を使って宣伝しないといけません。そうして、ようやく売れるようになったとき、他社がそれを真似して売り上げを伸ばしていきます。
 楽して儲けようと思えば、2番煎じの方が有利なのです。でも、結局は小利口な生き方で、牛の背にのっていたねずみと同じです。
 牛のような生き方は、この世の中を支えているのです。(2008.12.26)