ココロの盲点

 池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点』(2013.12朝日出版社)には、いろんな設問と選択肢があり、自分では気づかない内に、多くの人が一定の選択肢を選んでしまうココロの盲点について書かれています。
 例えば、映画の前売券を1500円で買ったけれど、その映画の評判が非常に悪かった場合、「①それでも映画を見に行く ②映画を見に行くのをやめる」のどちらを選ぶかです。

選択肢②は1500円の損ですみますから被害は最小限ですが、選択肢①はすでに失った1500円に加えて、映画鑑賞に費やす時間までもが犠牲になりますから、さらに損失が嵩みます。

 これをサンクコスト効果というそうです。どうしても多くの人は、選択肢①を選び、損失を連鎖させてしまうのです。(私も多分①を選ぶでしょう。)
 漢字を覚えるためにいい方法も書いていました。

 脳は入ってきた情報を「記憶すべきかどうか」と品定めします。このときの判定基準は「出力」の頻度です。
 脳は「この情報はこんなに使う機会があるのか。ならば覚えておこう」と判断します。けっして「こんなに頻繁に出会うのか。ならば覚えておこう」ではないことに注意してください。
 ですから、繰り返し学習して頭に叩き込むよりも、テストを解いて知識を使ってみたほうが、記憶としてよく定着します。

 出会う頻度ではなく、思い出して使う機会が、記憶に影響するわけです。これをテスティング効果というそうです。
 今日、関西スーパーで10%引きセールがあったので、洗剤・ソース・小麦粉などを買ってきました。関西スーパーは、最寄りのスーパーやコンビニより遠いのに、10%引きのため、わざわざ、少し遠くまで買い物に行ったわけです。

たとえば、駅前の店で6000円で売られていたヘッドフォンが、徒歩10分の店で2000円で売られていることを知ったら、きっと10分歩くでしょう。でも、駅前の店で37万6000円で売られていた液晶テレビが37万2000円だった場合はどうでしょうか。同じ4000円の差でも、歩きたい気分はずいぶんと減ります。(プロスペクト理論)

 たしかにそうです。
 大きな金額の買い物をするときによる金額の差が、数千円範囲なら、それほど気にせずに購入してきたような気がします。一方、缶飲料の110円と100円の差の方を気にしていたりするのです。
 ずる賢い政治家や経営者は、国民や消費者のココロの盲点をついて、自分の通したい政策や売りたい物を通したり売ったりしているのでしょう。賢い国民、賢い消費者になるためにも、心理学を学んでおく必要がありそうです。

(2015.12.29)