マイナス40度の国

 マイナス40度の国に行ったとき、どんなことに注意しないといけないかを椎名誠さんが書いていました。

 必ず手袋をしなさい、とKGBの随行者は言った。足元は圧雪凍結のツルツル状態である。慣れない我々がうっかり転び、そこに鉄のなにかがあって素手でそれを掴んだりすると手のヒラの皮膚が凍った鉄にそっくりはりついてしまい、熱湯をかけても駄目で外科的に刃物で剥がさなければならないという。ロシアではこれを「鉄が食いつく」と表現していた。子供がつまずき顔からぶつかって、“食いつかれ”片方の顔の皮膚を切りとって命を救ったという話もきいた。
(椎名誠「二月になると思いだす凍った国」『サンデー毎日2016.2.21』)

 最近、すごく寒い日が続きます。
 とはいっても、ロシアに比べれば、「日本の冬など「春の親戚」みたいなもんだ」と椎名さんが書いているとおりで、たいした寒さとはいえないのです。
 人は比べるものがないと、今を最低レベルだと思ってしまうことが多い。
「寒くて、もう耐えられない。」
と、子どもが叫んだら、椎名さんの体験した上記の話をしてあげるのもいいかもしれません。
 そうはいっても、寒いものは寒いのですが。

(2016.2.11)