四月から始める正しい徹底

『学力研の広場4月号』の原稿です。
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努力の方向性を間違えていないか
 プロ野球解説者・宮本慎也氏が「洞察」『週刊ダイヤモンド2016.02.27』の中で、選手に質問をしています。

 兼任コーチをしていた際、ヤクルトの選手数人に、こんな質問をしたことがあった。
「ゴロを捕るときには、バウンドのどこ(の段階)で捕ったらいいと思うか?」

 要するに、バウンドの上がり際で捕るか、落ち際で捕るかです。正解は、「上がり際」で、その方が補給面が多くなり、投げる動作にも連動するそうです。
 宮本慎也氏は、こうも言っています。

 努力の方向性を間違えていては、練習をしていても結果からは遠のいてしまう。

 新学年を迎えた子どもたちは、多くの子がやる気を出し、いつも以上にがんばっています。
 子どもたちのがんばりに気をよくした教師は、子どもたちに様々な課題を与えて挑戦させます。
 しかし、それらの課題が、子どもたちが伸びる方向を向いているでしょうか。
 一ヶ月経っても、子どもたちに成長が見られないようなら、やがて、子どもたちもやる気を失ってしまうでしょう。

算数の授業で徹底する七つのこと

(1)ノートを使うときは、ページ数を書き、それをミニ定規を使い、赤鉛筆で□囲みする。
(2)筆算の線、分数の横棒(括線)は、ミニ定規で引く。
(3)式や筆算との間は、二~三行空ける。
(4)まちがえを消しゴムで消さずに、赤鉛筆で×をつけ、別のところにやり直す。
(5)「0」は「ゼロ」(英語読み)ではなく、「れい」と日本語読みする。
(6)小数点は「、」ではなく、「.」と打つ。
(7)「cm」や「km」を「センチ」や「キロ」と省略せず、「センチメートル」や「キロメートル」と正しく読む。

  以上七つを子どもを主語として書いたが、子どもたちが勝手にできるようにはなりません。教師が正しいやり方を示し、その通りやっている子をほめ、まちがったやり方をしている子にやり直しを命じ、日々、根気よく指導していくしかないのです。

ミニ定規と赤鉛筆
 ある時、児童朝会で、次の話をしました。

 忘れ物の話です。家を建てる大工さんは、ノコギリ・カナヅチ・カンナなどの道具を絶対に忘れません。
 みなさんは、学校に勉強しにくるのですから、勉強道具を忘れることは、ないはずですね。
 今日、何か一つでも忘れ物をした人は、その場にしゃがみなさい。
 教科書・ノート・えんぴつ・赤えんぴつ・ハンカチ・ティッシュ。
 大丈夫ですか。
 今、立っている人は、何も忘れなかった立派な人です。みんなで拍手をしましょう。

 子どもが学習道具を忘れる理由の一つが「使わないときがある」というものです。
 ミニ定規や赤鉛筆を使わないときがあれば、持ってこなくてもいいと思えてしまうのです。
 ミニ定規を使い、赤鉛筆で、ページ数を□囲みすれば、それだけで、毎日、ミニ定規と赤鉛筆を使うことになります。
 ミニ定規で筆算の線、分数の括線を引くことで、丁寧さが身につき、道具にも使い慣れるだけでなく、ミニ定規が学習に必ず必要なものだと、脳と身体に刷り込まれていくわけです。(赤鉛筆も同じ。)

範を示すのが教師
 数字を数えるときに、
「いち、にい、さん、…」を
「いち、にい、スリー、…」と数えていたら、おかしいと指摘するでしょう。
 それなのに、「0」を「ゼロ」と平気で言わせている場合がよく見られます。
(教師自身が言っている場合もある。)
「0」を「ゼロ」と言わせるなら、「1」や「2」も、「ワン」「ツー」と言わせることが一貫した指導なはずです。
「cm」の「c(センチ)」は、「十分の一」という意味である。「mの十分の一」が「cm」なのです。
 普段から「センチ」「キロ」と言わせているなら、答えに、「c」「k」だけの単位を書いても、×はできないのです。
 範を示すべき教師が、正しく言えなければ、模範とは成り得ないわけです。
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 ここまで書いてみて、なんだか説教くさいな、と思えてきました。
 そこで、ここから大きく展開を変えたいと思って、6月からの特別支援学級での実践をふり返ってみました。(正しくは、考現学を見直してみました。)
 そして、次の実践を紹介することにしました。
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教えられた通りするとできる
 四月から徹底する学習上の約束は、子どもたちにとって、面倒なことです。
 だからこそ、「教えられた通りしていたら、いつのまにか賢くなっていた」という結果を作っていく必要が、教師にはあるのです。
 四年生のがい数の学習では、様々な表現が出てきて、子どもたちの多くが混乱します。
「千の位まで」「百の位で」「上から二けた」など、それぞれの要求に正しく答えないと正解となりません。
 私は、右のように、書かせます。
 これは、「千の位まで」のがい数です。
 マス目一つに一つの数字をきっちり書かせ、千の位に「ま」、その下の位に「で」を書かせ、「で」の上の数字を赤鉛筆で囲ませます。
 囲んだところを四捨五入させ、切り上げなら、千の位の数字の上にくり上がりの1を書かせ、以下の数字に斜め線を引かせます。
 このように手順通り、きっちりさせると誰でも、がい数ができます。
 正しい徹底の結果なのです。
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 これで原稿終了です。この原稿を学級開き講座の資料の一つにするつもりです。(これまで書いた学級開き関係の原稿も、今回、資料にするつもりです。)

(2016.3.21)