兆候に気付く二宮金次郎

 中桐万里子『二宮金次郎に学ぶ生き方』(2013.10致知出版社)に載っている逸話が面白いです。

 それは、ある年の田植えが終わる初夏の頃だったという。金次郎は、村人を集めて言った。
「今植えた米の苗を抜き去って捨ててくれ!」
 狂気じみたこの発言に、人々は仰天する。
 なぜ、彼がこんな行動に出たのか。それは数時間前に食べたナスに原因があった。金次郎はナスの漬物を食べ、その味に衝撃を受けたのだ。
「まだ夏前なのに秋ナスの味がする!」と。

 金次郎は、今夏が冷夏になることを予想し、米に代えて、稗や粟などの寒さに強い作物の植え替えを村人に提案し、実施したのです。(この年が天保の大飢饉。)
 金次郎が学級担任であれば、学級の微かな異変に気付き、即座に対応できるでしょう。
 もちろん、金次郎はナスの味だけでなく、菊の花、いもの根、葉っぱの先などの普段とちがう兆候を見て、総合的に判断しています。
 日々の学級の様子をよく観察し、普段との違いに気付くそんな目をもっていきたいものです。

(2017.4.3)