『エコノミスト2017.6.27』の「闘論席」で、池谷裕二氏が「ノートへの手書きとタイプ入力では、どちらが学習効果が高いか」を取り上げています。
記事自体は短いので、分けて全文を紹介します。
会議中に手帳を開いてペンでメモを取るのは今や時代錯誤。電子媒体にタイプ入力するのがスマートだ。電子媒体へのメモ書きは、スタイルとして洗練されているだけでなく、紙を散逸することもなければ、あとで判読できず困ることもない。キーワード検索できる利点もある。
冒頭で、手書きは時代錯誤と落とし、電子媒体へのタイプ入力の利点を強調しています。この始まりから、上記の問いの結果が予想できます。ノートへの手書きの方が、多分、学習効果が高いのでしょう。それを強調するために、あえて、逆方向にふりこを振っているのです。
タイプは大学の講義にも浸透し始めている。近年、授業中ひたすらキーボードを打ち込む学生は珍しくない。こうした聴講姿勢に対して「ノートと鉛筆で取るべきだ」と眉をひそめる教授もいるほどだ。
ここで、現在の状況を書いています。昔とちがって、電子媒体へのタイプ入力をする人が増えているわけです。
実のところ学習の効果は、講義内容をノートへ手書きするのと、ノートパソコンなどにタイプするのとでは、どちらのほうが高いのだろうか。
ここで課題が出されます。説明文であれば、問いの段落であり、問いの文です。
米プリンストン大学のミューラー博士らが、327人の大学生を対象に、両者の成績を比較する実験を行った。複数の講義映像を見せ、自由にメモを取ってもらった。対象者が半数ずつ、両方のメモ方法を担当するなど、条件を均等にした慎重な実験である。
信頼できる実験をしたことを強調しています。
この実験がウソっぽいと、結果を聞いても、信じることはできません。
講義後に内容に関する試験を行ったところ、手書きノートのほうが軒並み好成績だった。
「軒並み」の意味を調べてみると、「どれもこれも」(大辞泉)です。
この後、手書きノートのほうが好成績だったことへの分析が書かれていきます。
速度に劣る手書きは、講義の進行に遅れないために、要点を咀嚼しながらメモすることになる。一方、タイプの場合は、聞いた言葉を比較的そのままメモすることができる。実際「複写率」は、手書きの最大3倍にまで増える。このため内容を理解して要約するというプロセスが欠けてしまう。効率よくメモを残せるがゆえの不都合である。
脳は苦労を好む。便利なツールに潜む、なんとも皮肉な盲点だ。
無駄のない見事な記事です。こんな原稿が書けるようになりたいです。
(2017.6.22)