つぼみは冬にふくらむ

 日高敏隆『春の数えかた』(2005.1新潮文庫)に次の文章があります。

 じつはサクラが花の芽を作るのは、前年の夏である。このときにもう、来年の花が作られはじめているのである。サクラの花は暑い夏に作られて、寒いときにふくらみ、暖かくなって開くのだ。

 暖かくなるとサクラが開花します。でも、サクラの花のつぼみは、暖かくなってからふくらみ始めるのではないのです。つぼみは、寒い冬の間にふくらみ、そして暖かくなって花開くときを待っているわけです。
 人間の成長をサクラの花に例えてみると、厳しい寒さの冬につぼみをふくらませることが、つらい困難な時期に人は成長するといえます。
 開花を出力とするなら、つぼみをふくらませることを入力とも考えられます。
 人生は順風満帆とは進まないものです。
 うまくいかないとき、凪のとき、寒くつらいときもあるでしょう。
 そのときは、自分の中にいろいろなものを蓄え、ふくらませるといいのです。
 やがて、物事がうまく回り出すときが来るでしょう。
 そのときこそ、これまで自分が蓄えたものも出力するときなのです。
 教師であれば、自分の実践をレポートにし、世に問うてもいいでしょう。
 そして、その出力を通して、次に受け継ぐ実を作ればいいのです。

(2017.8.17)