巨大な資本と多くの人の情熱

 羽生善治『人工知能の核心』(2017.3NHK出版)より。

 また、人工知能の開発プロセスそのものにも、お国柄はあるように思います。
 例えば、日本の将棋ソフトは、チェスや囲碁のソフトの発展とは、かなり異なる流れで強くなってきた歴史があります。「ハードウェアの向上」に頼らずに、ひたすらソフトを強くすることで、日本の将棋ソフトは進化を遂げてきたのです。
 なぜ、ソフトを強くしなければいけなかったのか─。一番大きな理由は、「予算の差」です。前述の通り、チェスのディープ・ブルーであれば、IBMという大企業が開発を行い、アルファ碁であれば、少なくとも学習時にはグーグルのデータセンターとハードウェアを使っています。巨大な資本の投下で、物量に物を言わせるのが欧米流です。

 要するに、欧米は巨大な資本によって、AIを作っているのです。
 一方、日本には、そんな予算を捻出できる所がありません。
 日本の将棋ソフトBonanzaは、保木邦仁氏です。このソフトをオープンソース化し、いろいろな人に手を加えてもらうことによって、発展していきました。
 資本がなくても、多くの人の手を通ることで、発展させることもできるのです。
 欧米流のAIと日本流のAIの違いは、たジュガールの授業に、使えそうです。 授業化するなら、予算の額や開発年月日も詳しく調べる必要はありそうです。

(2017.8.19)