下り坂指導から上り坂指導へ

 野口芳宏氏が、「国語教育2018年1月号』で、「新学習指導要領を“評価”する 語彙力の拡充に期待~国語学力向上に現場からの改訂を!」という原稿を書かれています。

 語彙力を拡充する原理は、「チャンスを生かす」ことにある。「すがたを変える大豆」と出てきたら「変身する」と教え、「さまざまなざいりょう」は「多様な食材」、「たね」は「種子」、「かたくなる」は「硬化」、「手を加える」は「加工」と教える。

 類義語を適時に教えていくわけです。チャンスを生かそうと思えば、教師自身の語彙力が豊富でなければ、話にならないでしょう。

 かくしていっそう当該語の「原義」「本義」「対義」などが確かに理解でき、本来の語彙力拡充になる。一般に難語句が出てくると辞書を引かせ、平易な言葉に直して理解させる「下り坂の指導」が普及している。これに対して私は、平易な語句を難しい抽象語に導く「上り坂の指導」をも提唱している。
 国語学力はどのくらい抽象語を的確に駆使できるかという力だとも言える。

 相変わらず、野口先生の主張は、分かりやすくて明快です。
「抽象語を的確に駆使できるか」は、外山磁比古氏の「離乳語」と似ています。
 この原稿で、指導要領が「聞くこと・読むこと」よりも、「話すこと・書くこと」と表現優先・表現重視している問題点も、野口氏は指摘しています。 

(2018.1.8)