知識をどう出力するか

『サンデー毎日』(2014/05/13毎日新聞社)の椎名誠さんの連載「ナマコのからえばり」の題は「単細胞の研究」です。
 その中で、バクテリアについて熱く語っています。

 まず数が凄い。世界のどの大地でもスプーン一杯の土の中には10の10乗個のバクテリアがいる。あらゆるところに存在し、我々の口の中の歯茎を薄く削ると1平方センチあたり10の9乗のバクテリアがすんでいるらしい。したがってたった一人の口の中のバクテリアの数は地球にすむ人間の数より多いそうだ。だからキスなんかすると地球にすむ人間の倍ぐらいの数のバクテリアがわかわあいってまざりあい、もう大変なことになってしまうのだ。

 さすが椎名さんです。
 バクテリアが地球にすむ人間の数より多いことは、知識として知ってる人は多いでしょう。作家はそれをそのまま出すだけでは、作家とはいえません。
「だからキスなんかすると…」という例えを生み出すことができて作家といえるのです。
 知識を自分というフィルターを通して、相手の注目を集め、その知識に興味を持たせるように出力する。それをできる人こそが、日本語を使いこなしているといえるのかもしれません。

(2014.7.5)