万引きの授業

「⑪新しいシャープペンシル」『生きる力 5年』を扱った道徳の授業をしました。万引きに関するお話です。
 今回は、私の教材研究のやり方をふり返ってみます。

① 教材文を読み、場面分けする。
 連れ読みし、一回立たせて読ませるところです。長すぎないように分け、話が小さくまとまっているところを選びます。今回は4ページの話を5場面に分けました。
② 気になった箇所に線を引く。
「人のいない公園の木かげに来ると」「おどろいて」「こんな悪いことはいけないよ」「けいさつに連れていかえれるかもしれない」「もらっただけ」「子どもどうしが、わけもないのに、買った物をやり取りするものじゃないと思っているの」
の計6カ所に線を引きました。
③ 万引きについて、インターネットで調べる。
 まず、窃盗罪について調べました。確か重い罪だったという記憶があったからです。(懲役十年以下もしくは罰金50万円以下の罰金に処せられる。)
 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に載っています。この項目を読んでいくと、いくつか授業に使えそうな事柄が見つかりました。

中世欧州においては窃盗は強盗よりも重罪であった。その理由として、強盗は公然と犯罪を行うため撃退できる可能性があるのに対し、窃盗は密かに遂行できるため、卑怯であるというものである。
なお、盗品を譲り受けたり、購入・運搬・保管した者も盗品譲受け等の罪により処罰されるが(刑法256条)

 上記に関連して、刑法256条も調べてみました。

(盗品譲受け等)
第256条 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
2 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。

 盗まれた物を無償でもらうより、有償でもらう方が罪が重いわけです。
 TOSSランドや静岡教育サークルシリウスのホームページから、万引き関連の実践も調べ、参考になりそうなものをプリントアウトしました。
 TOSS№2170039「長期の休み前にしておきたい万引きの授業(全学年)」(寺田真紀子)からは、万引きの授業の導入の仕方を使わせてもらいました。

発問1「いったい何でしょう。」
ヒント1「1度やるとまたやりたくなってしまうそうです。」
「ゲーム!」「ドッチボール!」などが出た。答えは言わず、テンポよくヒント2を出す。
ヒント2「スリルがあるといわれています。」
「スリル」といわれて「お化け屋敷」「ジェットコースター」などの意見が出た。
ヒント3「ずばり、悪いことです!!」
「あったばこや!」「わかった!万引きや!」と答えが出た。
説明1「そうです。万引きです。「万引き」はだまって店の品物を取ることなので、“どろぼう”と同じ意味なのです。」

 TOSS№ 2210374「何万人もの人の期待や気持ちを引き裂く行為?万引きを防止するための語り?」(山本真吾)には、万引きされたCDの店長が語りが秀一でした。

 わたくしどもは、このCD1枚1枚を売って、それで給料をいただき、それで生活しています。
 わたくしにもまだ小学生ですが、娘がいます。娘はこのCD1枚1枚を買っていただくお客様がいるから生活できるのです。
 わたくしどもだけではありません。CDを作って生活している人、CDのケースを作って生活している人、そしてこのCDを日本中のお店に運んで生活している人、そしてそういった人たちの家族・・・
 たった1000円のCDにも、数え切れないくらいの人たちの生活がかかっていることをわかってわかっていただきたいのです。

 では、実際の授業展開はどうなったのかを以下に列挙します。

① 導入。一度やったらやめられない、スリルがある、悪いこと。万引き。
② 場面1の連れ読み、1人読み、指名読み。
③ 場面2の連れ読み、1人読み、指名読み。
④「ぼくは、なぜおどろいたのですか。」
⑤「万引きした正一君は、悪いと思っているのですか。○か×か。」
⑥ 場面3の連れ読み、1人読み、指名読み。
⑦「万引きはなぜ悪いのですか。3つ書いたら持ってきなさい。」
⑧「万引きはどのぐらいの罪になるのか。」
⑨ 場面4の連れ読み、1人読み、指名読み。
⑩「もらっただけでも、罪になるのか。」
⑪ 場面5の連れ読み、1人読み、指名読み。
⑫ お母さんの万引き発見法について語る。
⑬ 陰徳について語る。

「親になったら、子どもの万引きを見つけてあげることが大事なんだ」ということを強く語りました。1回目を見つけ、それを叱れば、再犯しなくてすむからです。見つからない状態で万引きをくり返せばくり返すほど、万引きに対する罪の意識をなくしていくのです。
 陰徳は、陰でいいことをすること。万引きとは、正反対な行為なのです。

(2007.5.1)