1人1秒のプレゼント

 運動会前に子どもたちに聞かせたい話です。

『1人1秒のプレゼント』
 マサと呼ばれている男の子がいた。マサは右足が不自由でいつも足を引いていた。 だけど体育の授業にもサッカーの練習にも参加するがんばり屋である。
 運動会が近づき、クラス対抗リレーの練習が始まった。
 そんなある日、マサがしょんぼりして職員室にきて担任の太田先生に
「僕、クラス対応リレーには出ません」
と言う。
 黙っているマサを説得して、理由を聞き出すと、マサはクラスの一部の子達が
「マサがいる限り僕らのクラスは一等になれっこない」
と話しているのを偶然に聞いてしまった。
 そこで先生に
「僕はやめる。僕が走ると負けるから」
と言いに来たのだった。
 翌朝、太田先生はクラスのみんなにマサがリレーに出ないと言っていることと、その理由を説明し、最後に
「リレーはみんなが力を合わせることが素晴らしいんだよ。大切な友達を、傷つけて、優勝したって何がうれしいの」
と、問いかけた。
 すると一人の男の子が立ち上がって、こう叫んだのだ。
「マサ走れよ。クラスのみんなが一人一秒ずつ速く走れば、38人で38秒速く走 れる。そうしたら勝てるぞ」
 その日から子どもたちは、それは、必死になって、スタートからバトンタッチの練習をする。
 そして、運動会の当日、マサは歯を食いしばって、自分の距離を走り抜いた。クラスのみんなも、マサに一秒をプレゼントするために必死で走る。よそのクラスは転ぶ子がいたり、バトンを落とすミスも出て、なんとマサのクラスに優勝が転がりこんだ。
 太田先生は涙の向こうの子ども達の笑顔が、まぶしくて仕方がなかった。
(「ありがとうを伝えたい」~もう一度人を信じたくなる60の話 第二章より)

 4年生から、紅白対抗リレーがあります。2クラスで、各クラス赤1チーム、白1チームの計4チームで走ります。全員参加です。
 足の遅い子は、当然いやがります。自分の足の遅いせいで、みんなに迷惑がかかると思うからです。でも、負けるのは、足の遅い子のせいでしょうか。
 上記のお話のように、チームとして協力しあい、1人1人が自分のタイムを縮め、バトンパスをうまくすれば、チームとして勝てるはずなのです。

(2013.9.22)