ふんぎる

 兵庫法則化合宿の酒井臣吾氏の講座では、次の言葉が迫ってきた。

ふんぎることをさせないと、造形力はつかない。

 描き出す場所と描き方を教えたら、何を描こうと考える間もなく、教師が「ようい……すた~と!」と言う。
 スタートだから、もう絶対スタートしなくていけないのだ。
 スタートが「 」の中で「すた~と」と、平仮名で書いてあるのは、競走と「ようい、スタート!」とは、言い方の雰囲気が違うからである。
 とにかくスタートはするんだが、スタートさえしてしまえば、あとはゆっくり考えながら描いていいのである。
 ようするに、何を描くか思いつかない子ほど、かたつむりの線になるということだ。
 これは、「知覚動考」という思想に似ている。
 まず、描き方・描く場所を知って覚える。しかし、そのあとに何を描こうとかうまく描けるかな、とかを考えたりしない。
 すぐに描き(動き)出すのである。
 そして、動き出してから、考えるということだ。

(1998.8.26)