「海のいのち」を要約

 桃太郎の要約指導を終えて、次に、「海のいのち」の一部分を使って、要約させました。まずは、次の文です。

 父もその父も、その先ずっと顔も知らない父親たちが住んでいた海に、太一もまた住んでいた。季節や時間の流れとともに変わる海のどんな表情でも、太一は好きだった。
「ぼくは漁師になる。おとうといっしょに海に出るんだ。」
子供のころから、太一はこう言ってはばからなかった。

 音読させてから、まず、大事な言葉を3つ見つけさせました。
「太一」「海」「漁師」「おとう」「父」が出されました。
「海」と「漁師」、「おとう」と「父」は、どちらを使ってもいい、ということで、要約文を作らせました。

・父と海に出る太一。
・父といつも海に出る太一。
・父と海に出ようとちかった太一。
・父と同じように漁師になりたいと思った太一。
・おとうと海に出ることが夢だった太一。
・おとうといっしょに漁師になりたい太一。
・おとうと海に出たい太一。
・父と海に出たがる太一。
・父といっしょに海に出たいと思った太一。

「出る」ではなく「出たい」であることを押さえました。
 その次に、以下の部分を要約させました。

 ある日父は、夕方になっても帰らなかった。空っぽの父の船が瀬で見つかり、仲間の漁師が引き潮を待ってもぐってみると、父はロープを体に巻いたまま、水中でこと切れていた。ロープのもう一方の先には、光る緑色の目をしたクエがいたという。
 父のもりを体につきさした瀬の主は、何人がかりで引こうと全く動かない。まるで岩のような魚だ。結局、ロープを切るしか方法はなかったのだった。

 ここでの大切な言葉は、次の3つに絞りました。
「父」「クエ」「こと切れる」
「こと切れる」というのは、死ぬことであることを確認しました。
 どの言葉が一番大事か確認しなかったので、体言止めではない、文による要約文が多く出ることになります。

・光る目のクエの近くには父がこと切れていた。
・クエの近くでこときれていた父。
・父は、水中でこと切れそこには、クエがいた。
・父はクエにやられこと切れる。
・父がクエにもりをつきさされてこと切れた。
・父は水中でクエといっしょにこときれていた。

 要約文を書かせてる途中で、チャイムが鳴ったので、6人しか書けていません。 それでも、6人の子が立派に書けていたのが、嬉しいです。

 向山型要約指導の良さについて、いくつか気づいたことがあります。

1)書きやすい。
 まず、大切な言葉を探しだし、それらを使って要約文を作ります。何もないところから、要約して書くのではなく、見つけた言葉を元に書くので、書きやすいのです。
2)文字を限定して要約するから、子どもが工夫する。
 20字以内などの限定があると、子どもは指を折りながら、文を作っていきます。そこには緊張感があり、それゆえに、短い文の中にもその子なりの工夫が入るのです。だから、面白い要約文ができるのでした。

(2000.10.13)