テーマ設定の仕方

 向山洋一[編]安武真理[著]『国語力アップの決め手!「文章の書き方」がミルミルうまくなる本』(PHP研究所)の中に、「課題・条件作文」というのがあります。例題18は、次のような課題です。

「夢」という題で、二百字程度の作文を書きましょう。
★ 題・氏名は書かず、本文から書き始めなさい。
★ 一段落めに事実・二段落めに考えや思いを書く二段落構成にしなさい。

「夢」という題が、すなわちテーマです。
 構成は、事実+考え・思いの二段落構成と指定されています。
 はたして、これだけの条件で、子どもはこの作文が書けるのでしょうか。
 多分、書けない子が3分の1ほどはいるのではないでしょうか。
 でも、これが「修学旅行」や「運動会」という題なら、書けるかもしれません。 なぜなら、それらの題に関する事実が、たくさんあるからです。
「夢」という題から、事実を導き出すのが難しいように思うのです。
 ということは、題(テーマ)を設定する時は、子どもがいろいろな事実を想起しやすいものを選ぶべきなのです。
 向山先生があげてる十のテーマは、はたしてどうでしょうか。

①「初めてのこと」
「○○が初めてできた時のこと」「○○を初めてした時のこと」ならば、思い出すことができるかもしれません。しかも、どれも事実で、そのことに対する思いも強く残っていることでしょう。
②祖父母 ③母 ④父 ⑦兄弟
 この4つのテーマに関しては、一緒に出して選択させた方がいいでしょう。片親だけの子も、祖父母がもういない子だっているでしょうから。
 これも、「母のしたこと」というように、事実はいくつでも出せそうです。
⑤自然・生きもの
 具体的に「秋」や「蟻」や「チューリップ」というテーマにすれば、それに関する事実と、思い・考えが出てきそうです。
⑥お手伝い
「自分がしているお手伝い」を具体的に書かせていけば、よさそうです。
⑧病気
「自分が今までで一番心に残っている病気」を書かせてみるといいかもしれません。ただ、健康な子は、書くのが難しいかもしれません。そういう場合は、自分の身近な人の病気をとりあげたらいいかもしれません。
⑨どこかへ行ったこと
 これはいくらでも書けそうです。「林間」「修学旅行」なら、全員共通のテーマで書かせることができます。
⑩こころ
「今までで一番嬉しかったこと」「今まで一番悲しかったこと」というように、今までで一番という心が動いた事実を書かせてみることができます。

「夢」や「未来」というテーマと違って、向山先生が選ばれたテーマは、事実を引き出しやすいものばかりです。
 ステップとして、まずは事実を引き出しやすいテーマを子ども達に与えます。 そして、子どもの書く力がついてきたら、事実を引き出しにくいテーマを選んでいくといいかもしれません。
 まずは、事実を引き出すこと(想起できること)。
 そして、問題なのが主題です。
 例えば、「○○が初めてできた時のこと」を事実として引き出してみます。

 大阪市立中央図書館の近くに、自分のマンションを初めて購入できた。

 この事実から、主題を考えてみます。

【主題】夢はかなえるものだ。

 とりあえず、事実+思い・考えの二段落構成で書いてみましょう。

「ここ、立ち退いてください。」
 ある日、アパートの大家さん、宣言された。アパートを建て直すそうだ。
 どうせ引っ越しするなら、ということで、西長堀の近くにあるマンションを購入することにした。
「いつか、図書館の近くに住みたい。」
 それが、本好きの私の夢だった。教師になりたいという夢も、臨時講師ではあるがかなった。次にかなえたい夢が、図書館の近くの住むことだ。
 なんと、西長堀には、大阪市で一番大きい図書館があるのだ。
 夢はかなえるためにある。

 事実から、主題を見つけ出す、というのは、意外とできるものです。
(それが誰にでも、そして、子どもにもできるかどうかは、分かりません。)
 主題に適した構成というのも、自分で「作文」をして、おぼろげながら、分かってきたような気がします。(まだ「気がする」段階ですが。)

(2001.10.22)