あしたも友だち

 10月の中旬ぐらいに、2年生の新任のクラスで国語の授業をします。
 教材は、うちだりんたろうの「あしたも友だち」です。東京書籍2年上の巻末「どくしょのへや」に載ってる12ページの長文教材です。
 1時間で、この教材を授業するのは無理があります。新任の先生には、
「教室で何回か音読しておいてください。」
と、お願いしました。
 新任の先生の学びになるような授業をできたら、と思ってます。

「おもしろい 歌だねえ。」
 みみずくの じいさんは、思わずほほを ゆるめました。

 くまは まったく
 こまった やつだ
 りっぱな きばが ありながら
 くりやなんかを 食べたがる
 こまった くまった
 くまった こまった

 きつねと おおかみが、くまの からかい歌を 歌いながら さん歩を して います。
 ところが─。ちらり。おおかみは、木の かげに、その くまが たおれて いるのを 見つけました。
(おい、づおした。)
 おおかみは、くまに かけよりかけて、はっと ふみとどまりました。
(おれは、やさしい ことを しない おおかみだぞ。)
 そうです。おおかみは 森一番の らんぼうものと きまって いました。 その おおかみが、くまを たすけたり したら……。

 物語の起の部分です。
 2年生の国語は、分かち書きなのに、改めて気付きました。
 このあと、おおかみは、友だちのきつねにばれないよう、くまを助けます。
 自分のイメージを壊さよう、人助け(熊助け)をするのです。友だちのきつねは、おおかみが自分よりいい友だちを見つけたんじゃないか、と疑います。
 ある日、おおかみの後をつけて、真実を知り、きつねはおおかみのことをよりいっそう好きになるわけです。
 このお話の中で、一番変化しているのは、きつねです。
 それゆえ、これはきつねが主人公のお話といえるでしょう。
 おおかみに対する浅い理解が、深い理解に変わるお話なのです。

(2012.10.1)

「あしたは友だち」の転の部分です。

 ところが─。
(……おおかみさん。)
 きつねは、声をのみこみました。
 家でむずかしい本を読んでいるはずのおおかみが、どこかへ出かけていきます。
(やっぱり……、ぼくよりいい友だちが……。)
 きつねは、目がじわっとうるんできました。
 気がつくと─。
 きつねは、してはいけないことをしていました。おおかみのあとを、こっそりつけていたのです。
 おおかみは、くりのみをひろいながら歩いていきます。
(ぼくよりずっとずっといい友だちにあげるつもりなんだ……。)
 おおかみが、岩あなの家へ入っていきました。
 くまの家です。きつねは、そっと岩のあなへ近づきました。
「ありがとう、おおかみくん。あんたのおかげで、ほうたいもとれた。あしたから は、もうおきられそうだ。」
 くまの声でした。
(そうか、くまさんがけがをしていて……。)
 きつねは、そうっと岩あなをはなれました。すこうし顔を赤くして。

 ここが転になるでしょう。
 きつねが、もしおおかみの後をつけなかったら、どうなってたかです。
 おおかみが急にきつねと遊ばなくなった理由も分からずに、友だちに戻っていたことでしょう。でもその場合、きつねには、不安が残ります。
 また、おおかみに自分よりいい友だちができるかもしれない。
 でも、今回後をつけ、おおかみがくまの看病をしていることを知って、おおかみの真意を知るわけです。今回のことで、おおかみのやさしさ、おおかみがやさしいと思われることを嫌うこと(の子どもっぽさ)などを知り、ますますおおかみのことが好きになるわけです。

「あしたもあそぼうね。
 あしたも友だちだよう。」

 このきつねの台詞の中に、上記のような思いが込められているのでしょう。
 おおかみの別の一面を知り、よりおおかみを好きになるきつね。
 これが、このお話です。
 このお話の主題は、「人には隠された面がある。一面だけを見て、その人を判断することは愚かなことだ。」とでもなるでしょうか。
 次は、授業展開を考えていきます。

(2012.10.1)

 思いつきの授業案1です。

1)教科書112ページを開きます。
2)先生のあとについて、読んでいきましょう。
3)「おもしろい歌だねえ。」(以下、連れ読み。教科書持つことや姿勢、声量を指導)
4)次は、交代読みをします。先生が読んだら、その次の文をみんなで読みます。
5)今度は、隣の人の交代読みをします。席の右側の人から読み始めます。
6)(2人を立たせ、やらせてみる。全員、立たせて、)終わったら座ります。始め。
7)(終わったあと、顔を寄せ合って読んでる2人組をほめる。)
8)ところでさ、荒井先生って、どんな先生だと思う?(挙手指名で発表)
9)担任の江草先生って、どんな先生か教えて。(挙手指名で発表)
10)じゃあ、このお話に出てくるおおかみって、どんなおおかみですか。
11)国語ノート出して。どんなおおかみか1つでも書けたら、持ってらっしゃい。
12)(持ってきた子をほめ、板書させていく。)
13)(板書を扱いながら、それが本文のどこに書いてあるか確認していく。)
14)先生はさ、おおかみはこまったおおかみだと思ってるんだ。
15)例えば、113ページの10行目に、「おおかみは森一番のらんぼうもの」って、書いてあるでしょ。
16)(ここで「ちがう、ちがう」の声が出れば、その意見を言わせる。)
17)そうか。でもまだあるよ。114ページ、6行目。「おおかみは、きつねをおいてきぼりにして、さっさと帰っていきました。」ひどいよね。
18)(ここで「ちがう、ちがう」の声が出れば、その意見を言わせる。)
19)う~ん。でもまだあるよ。118ページの1行目。「ううむ。あした、か……。あしたは、勉強をする日になってる。」おおかみは勉強したの?嘘だよね。友だち に嘘をつくなんて、ひどいよね。
20)(ここで「ちがう、ちがう」の声が出れば、その意見を言わせる。)
21)う~ん、まいったな。みんな、ちょっとしか読んでないのに、すごい。
22)最後に1つだけ、難しい問題だすけど、やってみますか。
23)このお話には、みみずく、おおかみ、きつね、くまが出てきました。この4人の中で、一番変わったのは、誰でしょうか。
24)(できれば理由も言わせていく。)
25)先生は、きつねが一番変わったと思います。今まで知らなかったおおかみのいいところに気付いて、よりおおかみのことが好きになったんだと思います。みなさんも友だちのいいところに、たくさん気付いて、「あしたも友だち」って言える友だちを増やしていってください。

 最後が少し道徳っぽいけれど、これが作者の主題だと思うので、言うことにします。問題は、時間的にこままでやれるかどうかですね。

(2012.10.7)