百人一首~静かなる対戦~

 10月ごろから、2年生のクラスで、百人一首を毎日している。もちろん、五色百人一首である。(毎日、短時間でできるのは、五色百人一首しかない。)
 百人一首はゲームといえども戦いですから、子ども達は興奮する。そのため、なかなか静かにならない。いや、さわがしいと、いえる。
 それでも、上の句を読み始め、下の句にかかるころになると、シーンとする。よく聞いていないと、札をとれないからであろう。
 あまりにもうるさい時は、全員が静かになるまで待つこともあった。
 しかし、それでは5分内で試合を終わることが難しくなってしまう。
 どうすれば、静かな対戦ができるか、私にはわからなかった。厳しく叱っても時がたてば、元の木阿弥。効果がない指導といえよう。
 ところが、『教育トークライン98’2』の中に、百人一首の中で、子ども達をあっという間に静かにしてしまう魔法の言葉を見つけたのである。
(小宮孝之氏「初めて五色百人一首をする方のために」)
 私は、子ども達に次のように言いました。

おしゃべりした人は、お手つきにします。

  1枚目を読む。いつもより、はるかに静か。しかし、何人かおしゃべりをしている。
『今、おしゃべりをした人、立ちなさい。』
 数人の子が立つ。
『お手つきです。相手から1枚もらいなさい。』
 よくぞ1回目でしゃべってくれたものである。これで、「おしゃべりしたら、お手つきとなる」がルール化されたことになるのだ。
 次の日から、静かな静かな対戦となった。
 時たま、聞こえる声も百人一首を探す声である。これは、黙認する。
「先生、これでいいの?」
と、取った札を確認する声、これも黙認した。
 しかし、それ以外のおしゃべりは、すぐにその子の名前を呼び、『しゃべりましたね。お手つきです。1枚もらいなさい。』と指示した。
 最初にしゃべった子をお手つきにすることで、多くのおしゃべりを防ぐことができるのである。
 それにしても、なぜ、「おしゃべりしたら、お手つき」が、こんなにも効果があるのだろうか。
 きっと、「静かにしなさい」という注意より「おしゃべりしたら、お手つき」の方が、ゲームの中の一ルールとして機能したからなのだと、思う。

(1998.1.20)