事情を詳しく聞く

 みんな遊びが「サッカー」に決まった。
 体育の授業で、正式なサッカーを教えてるわけではないので、とにかくボールに全員がかたまるぐちゃぐちゃなサッカーになる。それでも、子ども達は興奮してやっている。だから、危ないともいえる。
「危ない」と思ったら、近づかない。そういう判断力も身に付けてほしい。
 さて、休み時間の終わり、一人の男の子が興奮して怒っていた。どうも、試合中に、ぶつかって、顔面を蹴られたらしい。今にも、やった子に、なぐりかかりそうなので、とにかく、私がおさえてとめた。
 教室に行っても、その興奮はおさまらず、やった子やそれ以外の子と、言い合いになってしまう。とにかく、冷静さを取り戻させなければいけない。
『○○くんが、うるさいと思う人、手をあげて。』
 ほぼ全員の手があがる。その手で、その子をまず圧倒して黙らした。
『○○くんの事情を聞きます。何があったか、全部話しなさい。』
 そして、言いたいことを話さした。あいずちを打ちながら聞く。
 興奮して話すので、ところどころ、事実関係がつかめないところも出てくるので、その子に質問して、もっと詳しいことを聞いた。
 そうすることで、その子もだんだん冷静になってきた。
 興奮してる時は、感情が爆発しているといっていい。怒りの催眠術にかかっていると、例えてもいい。
 目をさまさせるには、理性を取り戻させたらいいのだ。
 理性を取り戻させるのには、頭を働かせるのが一番いい。
 だから、詳しく事情を聞くことで、興奮してる子の頭を働かせ、冷静にさせることができるのだ。
 風邪をひいた時、自転車でこけて怪我をした時、パチンコで大損した時、などそんな時、人はそのことを誰かに話すんではないだろうか。誰かに伝えたくてしかたがない状態になる。
 自分の事情を知ってもらいたいという思いを多かれ少なかれ、人はもってる。 興奮したその子も、自分に起こったことをみんなに聞いてもらうことで、どこか癒されるということがあるんだと、私は思う。

1 事情を詳しく聞く。(理性を取り戻させるために)
2 みんなの前で事情を聞く。(心を癒すために)

 私はカッとなりやすい時がある。そんな時って、なんでカッとなってるのか、冷静に説明できたりしない。そういう時、子ども達に聞いてもらえば、いいのだ。『ちょっと先生の話聞いて、今、○○くんがな……』と。

(1998.1.30)