子どもの語彙力を増やすために

 11月のごんぎつねの研究授業に向けて、様々な本を読んでいます。
 それらの実践の中で、「ごんがやさしい」という意見がたくさん出てきます。
 やさしい理由として、ひとりぼっちの兵十のために、つぐないとして、くりや松茸を持って行くからです。
 私が思うのは、子どもたちは語彙力が少ないから「やさしい」としか表せないのではないか、ということです。
 私なら、「あわれ」とか「いじらしい」とかの言葉が浮かんできます。
 このお話全体の感想を書かせれば、きっと「かなしい」というありふれた表現を使うでしょう。でもそれは、子どもの中に、いろいろな語彙が蓄えられていないから、しかたないのです。
 となるならば、子どもの語彙力を増やすため実践も必要なわけです。
 フィンランドの教科書に、物語「カラスのチーズ」があります。そこには、物語だけでなく、設問も載っています。

⑤カラスとキツネは、どのような登場人物ですか。下の言葉から当てはまるものをすべて選びなさい。または、自分で適当な言葉を考えなさい。
 親切 きんべん うそつき まぬけ うぬぼれ 他人をねたむ
 いろいろなことを思いつく 口がうまい 頭がいい きびんな ずるい
 うぬぼれている ずうずうしい ねばり強い おしゃべり ばか
 ずるがしこい かしこい いばっている

 子どもたちからだけでは、上記のような言葉は出てこないでしょう。
 フィンランドの教科書の方が、人物の性格を表す様々な表現が学べます。
 では、「ごんぎつねは、どのような登場人物ですか。」と問うて、上記のような言葉を並べたらいいのでしょうか。そして、そこに「あわれ」とか「いじらしい」とかの言葉を入れたらいいのでしょうか。
 でもそうすると、子どもは「先生、いじらしいって、どういう意味ですか」と聞いてくるでしょう。その時、どう説明したらいいのか迷ってしまいます。
 明鏡国語辞典での「いじらしい」の意味は、以下の通りです。
「幼い者や弱い者の懸命なようすを見て、無邪気でかわいらしいと思うさま。ま た、守ったり助けたりしてやりたいと思うさま。」
 お父さんに仕事へ行ってほしくない娘が、お父さんの靴を隠したりするのは、いじらしい。というような具体例を挙げればいいのでしょう。
 また、同僚の先生が、詩の中から見つけたらどうかとおっしゃいました。
 金子みすずの詩や、絵本などから、探せるかもしれません。
 久保先生がいみじくも言っていました。
「いい授業をしようと思ったら、いい授業をする子どもを育てなければいけない」と。ごんぎつねの物語をしっかり読み込めるだけの子どもに育てなければ。

(2008.8.8)