ローストビーフ事件

 2人の女の子が報告に来ました。
「○○さんが○○くんにローストビーフと言われてた。」
 もう少し詳しく事情を聞くと、言っている子は2人いるそうです。
「分かりました。先生の方で、何とかします。」と、返事。
 その後、言われた本人に実際そう言われているかを確認。
 そうじ中、ローストビーフと言った2人の内、1人を呼ぶ。これは全体の前で話しにくい内容なので、個別指導するのです。
 2人の内どちらを先に呼ぶかは、とても重要です。
 原則として、落としやすい子を先、一癖ある子は後にします。
 落としやすい子を先に呼び出すことで、事実関係がよりはっきりします。さらに、その子が呼び出されていることをもう一人の方は気付いて、「やばい、俺も呼ばれる」という覚悟ができるからです。
 呼び出した時に、最初にかける言葉は、だいたい決まっています。
「なんで呼ばれたか分かりますか。」
 本人の口から、悪事を白状させるのが大切です。
 1人目の子は、「何で呼ばれた分からない」と言うので、徐々にヒントを与えていきます。
「○○さんとのことです。」
「○○さんに、何か言ってはいけないことを言ったでしょ。」
「何と言ったのですか。」
というように、だんだんと詰めていきます。
 どこでその子が、自分がやった悪事に気付くかもポイントです。
 自分がやった事をなかなか言わない子には、より厳しく責めるためです。
「なんでローストビーフって言ってはいけないのですか。」
と、これは私が追求して言っているセリフです。
 私が言ってはいけない理由を言うのではなく、言った子に言わせる。
 その子は賢い子なので、ローストビーフが相手の体型のことをからかっているということを説明できました。
「その言葉が相手を傷つけるということをあなたなら分かるでしょ。」
 ここまで話せば、1人目の子はもう大丈夫です。反省もしていました。
 2人目の子は、離れたところで聞き耳を立ててたのでしょう。
「なんで呼ばれたか分かりますか。」
と聞くだけで、自分のやったことを全て白状しました。
「それは言葉の暴力です。言っていいことではありません。」
と、短くきっぱりと叱って終了です。
 相手によって、長く叱ることは逆効果にもつながるのです。

(2009.1.29)