私のおすすめ本紹介

 学力研ニュースの原稿です。テーマは「私のおすすめ本紹介」です。
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 結果が原因を生み、それがまた結果を生む。歴史は点と点の繋がりで見なければならない。井沢元彦氏『日本史集中講義』(詳伝社)

 六年生で教える日本史で、困ることはありませんか。
 小六~大学まで、日本史について学んできたけれど、時代と時代のつながりが今ひとつ分からないのです。
 なぜ、大和朝廷の時代から天皇家が続いてこれたのか。
 なぜ、貴族にかわって、武士が起こり、政権をにぎったのか。
 なぜ、信長だけが、京に上洛することができたのか。
 なぜ、中国と違い、日本は西洋に追いつくことができたのか。
 これらのなぜに、井沢元彦氏は明快に答えてくれます。
 例えば、武士の起こりは、穢れを忌み嫌う日本人の思想性から生まれています。 動物や人を殺すことで、人は穢れを持ってしまう。それゆえ、その穢れ仕事を貴族はやらなくなります。武器すらも人を殺める穢れた道具ということで持たなくなるのです。そのため、国がなすべき犯罪の取り締まりや治安維持の仕事をおろそかにしていくのです。当然、治安は乱れ、犯罪が頻発します。そうした中で、自らを守るために武器を持つ人たちが生まれてくるのです。
 貴族が武力を捨てたことによって、武士が生まれたのです。
 現代の日本人は、歴史をふりかえってみると、貴族に近いのでしょう。
 海外のようなテロや銃乱射事件が起こらないのは、日本人が武力を放棄しているからです。
 手洗い・うがい、毎日お風呂に入る、そんな清潔好きも、穢れを忌み嫌う日本人の性質をいまだに受け継いでいるのでしょう。

 井沢元彦氏の本は多数あります。有名なのが『逆説の日本史シリーズ』(小学館)。(ホームページでは「逆説の世界史」が月2回掲載されてます。)
 多数の本の中で、最初に読むといいのが、『日本史集中講義』です。
 古代から現代までの出来事の中から、日本史独特の重要なテーマが扱われています。
 自国の歴史を語れない者は、海外では軽蔑されるといいます。
 この本一冊を読めば、日本史について、ちょっとばかし自信を持って話せるようになります。ご一読をお勧めします。
 自国の歴史を知ることは、自分が今、どこに立っているのかを確認する作業でもあります。

(2013.1.19)