ボスにしてほしくないこと

 1時間目、新出漢字2文字を気合いを入れて、教えました。
 最初に、川→山→上の3つの漢字の空書きをさせました。(向山氏の追試)
 なんで今頃、と思うかもしれませんが、今までは、大きな声で筆順を言いながら空書きをさせる、というのは、受け入れられなかったからです。
「上」の漢字の筆順は、見事に二つに分かれました。
 そして、新出漢字2文字。
 小学校で習うもので、漢字ほど、将来にわたって役立つものはないと、私は考えているぐらいです。
 次に、宿題にしていた小数のわり算の問題3つの答え合わせをしました。
 朝、来た先着の3人に、板書させておいたので、すぐに出来たのです。
 つづいて、理科の本を開かせ、袋に入れたアルコールに熱湯をかけると、袋がふくらむ、という実験を見せました。
 ストーブに、やかんをかけておいたのです。
 それから、理科のまとめをする時に、ここは抜かさないでほしい、というところを班交代で読ませ、チェックさせました。
 2時間目は、見開き2ページによる、理科のノートまとめです。
 1時間しっかり時間をとると、それなりのものが出来上がりました。
 3時間目は、体育でしたが、風邪も多いし、中止にしました。(どのみち、運動場は使えなかったのですが、使えても中止にするつもりでした。)
 最初に、学級通信を読み、それから、机の上に鉛筆1本だけ置かせました。
 それから、トイレ事件についてやどんな学級にしたいかを書かせたプリントを配ったのです。
『4と書きなさい。』

4.「○○くんに、やってほしくないこと」を書きなさい。

『いくつでも書きなさい。』
『これは誰が書いたかは言わず、○○くんに読みます。』
 ほとんどの子が、鉛筆を置いたところで、1つずつ発表させていきました。
 ここでは、子どもの書いたものを全部のせます。

・ぼうりょくや、口で、ひどいことをいったり、1・2年生や、年下の人や、5・6年生をいじめたりしないでほしい。
・ぼうりょくをやめてほしい。すぐおこるのもやめてほしい。つくえをけったりすることもやめてほしい。
・ドッチボールじゃないのに、つよくボールをなげてあてないでほしい。ちょっとのことでおこらないでほしい。
・けったり、なぐったり、わるぐちをいったりしてほしくない。
・すこしのことでおこらないでほしくない。○○君にもしなにかしてもあやまったらゆるしてほしい。
・たたかれたりしたくない。ことばでそわそわ、わるいことをいったりしてほしくない。ちょっとしたことでおこってほしくない。少しあたったぐらいでおこってほしくない。
・ひどいことをいったり、しないようにしてほしい。
・すぐちょっとしたことで、おこったり、ぼうりょくをふらないでほしい。わるぐちをいわないでほしい。へんなことをしないでほしい。いじめをしないでほしい。
・わる口をいわないでほしい。
・ぼうりょくや、わる口を言わないでほしい。なにもしてない人にわるいことをしないでほしい。
・すぐおこるのをやめて。すぐなぐるのをやめて。トイレにいくのにさそうな。かってにしきるな。おこったらすぐほかの人ときもいとかいうな。
・いやなことをいってほしくない。ぼうりょくをふるってほしくない。
・ぼうりょくをふるってほしくない。めいれいをいわない。すぐにおこらない。・パンチとかされたくない。わる口をいってほしくない。
・気げんをわるくしてほしくない。
・物にあたったり、しないでほしい。かげでみんなに、ぼうりょくをしないでほしい。すぐおこらないでほしい。なにもしてないのに、したとかきめつけないでほしい。へんなことをいわないでほしい。
・ともだちをなぐったりしてほしくない。すぐおこらない。せんせいがいないところでなぐらない。ゲームのことでおこらない。まけたからっておこらない。ものにあたらない。だいどうたいむみんなとあそんでほしい。おとこだけでしゅうだんしてほしくない。
・いじめやけらいあつかいをしないでやさしい人になってほしい。
・ぼう力をやめてほしい。いじめをやめてほしい。いじわるなどもやめてほしい。やってないことをむりやりやったとか、やったのにやってないとかいわないでほしい。
・あまりおこらないでほしい。
・たいけいのことについて(ブタ)といわれるのはいやだ。
・みんなをなぐらないでほしい。すぐおこらないでほしい。めいれいしないでほしい。
・ぶたたないでほしい。おどさないでほしい。すぐおこらないでほしい。
・ぼうりょくは、やめてほしい。すぐおこらないでほしい。

  子ども達は、これだけの思いを持っているのです。
 そうとう根が深いんだなと、思いませんか。
 でも、ボスが変わるだけでは、ダメなのです。
 地球環境を語る高木善一さんがいつも言っています。

「自分なんだ!」

 こんなクラスになった原因をボスだけのせいにしていてはダメなのです。
 今までの横暴を許していた(または肩をかついでた)、自分という存在を変えていかなければいけないのです。

5.「自分は、これからどうしていくのか」を書きなさい。
・○○くんをこわがらないようにする。
・ぶたれたら、やめてといいたい。
・なにかやられたら、すぐ先生・お父さん・お母さんに言う。めいれいは、きかない。イヤなことは、イヤっていうようにする。
・こわがるのをすこしずつでもやめる。
・なんかやられたら、先生にいうようにする。
・○○くんのところにあつまったり、きげんとりみたいなことをしないようにする。自分で考えてこうどうする。
・じぶんで考えてこうどうする。
・今やっているようにする。
・これからいじめられている人をちゅういしたい。
・なにかをやられたり、いわれたりしたら、先生やお母さんにほうこくできるようにしたい。
・ちゃんとべんきょうとかしていきたい。
・何か言われたら「やめて」というようにしたい。
・何かをされたら「やめて」といえるようにしたい。
・すぐ人をそそのかしたり、すぐいうことをきかないようにする。
・何か言われたら、先生や、家ぞくに言おうと思う。
・何かされたら先生にほう告できるようにしたい。
・自分は、これから、はっきりして、いやなことは、いやと、はっきりいうようにする。
・なにかをされたら、やめてといえるようにしたい。
・友達とはなしをしたり、けんかをしたりしないようにしていきたい。
・○○君になにかいわれたりやられても、はっきりいえるようになりたい。
・いやなことは、はっきりいやといるようにしたい。
・こわがらないようにがんばる。
・○○君と、ふつうに、しゃべったり、遊んだりしていきたい。
・ふつうにしていきたい。

  何かをされたら、という表現が多いのは、まだボスは変わっていない、と思っているからでしょう。
「変わるわけない。」と親に、はっきり言っている子もいるぐらいです。
 このあと、先週の月曜日に書いた作文を何点か読みました。
『今まで先生が作文を紹介しなかったのは、君たちが○○君のことを気にしていたからです。』 
「そうそう。」という、つぶやきが聞こえます。
 そして、5人の子の名前を言い、
『紹介してほしくない人、手をあげてください。』と、聞きました。
 誰も手をあげなかったので、5人の子の作文を紹介しました。
 そして、このあと、次のように言いました。

 原稿用紙半分は、1年生レベル。
     1枚は、2年生レベル。
     1枚半は、3年生レベル。
     2枚で、4年生レベル。

『たくさん書けば書くほど、うまくなるのです。』
 質より量に挑戦させる方が、やる気を出せるものです。
(なぜなら、質は、自分ではなかなか見えないからです。)
 そうそう、先週の土曜日から、百人一首の暗唱テストを始めました。
「何かに挑戦させていく」ことで、子どもの力を高めたいと思ったからです。
 個人個人の力を高めることで、クラスは変えていけるのです。
 4時間目は、作文書きです。
 その間、私は校長室に行き、ボスの子と会ってきました。
 そして、3時間目に書かせた「○○君にやってほしくないこと」と「自分は、これからどうしていくか」を読み上げました。
 ボスは、結構落ち着いていました。
 聞くところによると、父親が一週間、兵庫に事務所に行ってるそうなのです。(父親の影響をすごく感じました。)
『教室に戻って、みんなと勉強したり、遊んだりしたいですか。』
「はい。」
『5時間目の授業に出てみますか。』
「もう少し考えとく。」
 私は、いい反応だなと、思ったのです。
 5時間目は、百人一首を教え、アルテアデザインを描かせました。
 本当は算数をするつもりでしたが、5人休んで(ボス入れて6人いない)状態で、小数のわり算の一番難しいところをやるのは、ダメかなと、思ったのです。
(四捨五入して、10分の1までの概数にして求める小数のわり算です。)
 5時間目が終わって、子ども達とさよならしたあと、教室で委員会がありました。その途中、教頭先生が、ボスが校長先生のワープロで書いた手紙を持ってきてくれました。
 以下に載せるのが、その手紙です。

 僕は、みんなにやってはいけないことをしてしまった。きげんがわるけりゃいやなことをいったり、暴力したりして、学校にこれなくしたり、荒井先生にこまらせたり、校長先生にも迷惑かけたり、もっと迷惑かけてる人がいます。教頭先生でもなにより迷惑かけてる。
 皆とはそう四年一組の皆です。□□君に人間とはおもえないことをしてしまった。トイレのタワシを舌につけたり、ランドセルでなぐったりしていた。で、それからほかの人にもしているけどいっぱいしているからやった人をいいます。○○君 ○○君 ○○君 ○○君 ○○君 ○○君 ○○君 ○○君 ○○君 ○○君です。
 皆本当にごめんなさい。

 この手紙が嘘にならないように、祈るような気持ちです。

(2000.2.7)