久保先生は,次のような予習(宿題)を出しています。(ノートP.14)
問九,「サケが森を作る」とはどんなことですか。
自分の言葉で説明しなさい。(一ページ使って)
(一ページ使って)という指示がくせものです。
「卵を産んで死んだたくさんのサケをクマがいっぱいきてパクリとサケを食べ, おなかがいっぱいになったクマが森へ帰り…」
この子は,優等生なのでしょう。教科書をよく読み,そこから類推し,自分の考えを長々と書いています。
でも,この説明は間違いになるのです。
なぜなら,教科書には次のように書かれているからです。
すでに一生を終えたサケが,たくさん流れてきています。
「サケが森を作る。」
アラスカの森に生きる人たちの古いことわざです。産卵を終えて死んだ無数のサケが,上流から下流へと流されながら,森の自然に栄養をあたえてゆくからです。
簡単にいえば,サケの死体が木の栄養になる,ということです。
この答えは簡単に書けるのです。
しかし,久保先生は,「1ページ使って」という補足指示を出しています。
そのため,優等生くんたちは,本文の言葉から勝手に類推して,作者が言ってもいないような説明を書いたわけです。
これは,優等生を間違わせるために,わざと久保先生が出した問題なのだと,思っています。
優等生が間違うということは,裏を返せば,学力の低い子が逆に正解するということです。授業の中で,逆転現象が起きるのです。
なぜ,この逆転現象が授業の中で必要なのか,長崎の伴一孝氏は学校の研究通信で次のように書いています。
小野さんは,4年2組では一番の優等生です。峰松先生に言わせると「そつがない」,つまりとても要領のよい子です。こういう子の考えをひっくり返すことによって,学級に逆転現象を引き起こすのが,学級に常に生じる「差別の構造」を破壊する営みになります。どの子の能力も,固定化したものではないということを“事実”で繰り返し子どもに示し続けていくことが必要なのです。ですから,「いじめ」をなくすには,授業において「優等生が間違い,非優等生が正答を出す問題・発問」が必要なのです。これも,原型は数十年前に斎藤喜博が主張したことです。だからこそ,教師は「一般的な問い」をしてはならないと言うのです。教師がこの努力を怠ると,学級に「いじめ」が生じます。なぜならば,子どもたちの中に「できる子・できない子」という固定化した人間観が生じ,それが学級に「差別の構造」を醸成していくからです。これを壊すものは,教師によって周到に準備された授業に他なりません。 「小江原小研究通信 №8」より
理科の実験前に予想を立て,理由を発表させてから実験をします。
初めての実験ですから,できる子もできない子も,予想が当たるとは限りません。もっともらしく理由を言っていたのに,実験をしてみるとその通りにならなかった,という場合もあります。
ですから,理科というのは,逆転現象を起こしやすい教科なのかもしれません。
ただ,塾で結果を学習している子は,教科書にある実験をしている限り,予想を間違えることはありません。
ならば,教科書にないような実験の問題を教師が出していく必要があるのです。 今年度は,ほぼ教科書に沿って,実験していきました。
来年度も理科担当なら,発展の実験もできるようしていきたいです。
(2005.3.1)