30秒自己紹介

 昨日、宿題の一つとして、「30秒自己紹介の練習」を出した。
 朝、一人の男の子が、自己紹介で言うことを書いたメモを見せてくれた。
「25秒やった。」と。
「えらい。」と、ほめた。
 さて、自己紹介の時間になった。
「誰からでもいいです。どうぞ。」と、私は言って待った。
「必ず、全員、言ってもらいますからね。」とも言った。
 3分ほど、たつ。
 立とうかどうしようか、迷う姿がいく人か見られた。
 女の子が立って言った。
「私の名前は原涼子です。得意なことはピアノです。好きなことは習字です。」
 私は原さんが言い出すと同時に、30秒にセットしたタイマーを押した。原さんが言い終わった時、まだ20秒残っていた。
 それでも、30秒でピピピッーと鳴るまで待った。
 時間は余ったが、最初に話し出した勇気を私は大いにほめた。
 すぐ次に男の子が自己紹介したが、そのあと、また時間があいた。
 3人ほど立って、結局、何も言い出せずにすわったこともあった。
 法則化サークル「風来坊」の松藤司氏に、この間、3年の学級通信を借りた。松藤氏は、始業式の日に、この指名なし自己紹介をやっている。
 もちろん、指名なし討論の伏線である。
 指名なし発表や指名なし討論で、私が今まで困ったのは、子どもが立たないことよりも、いっせいに立って、譲り合うのに時間がかかったことだ。
「最初に、立った子で誰かが話し出したら、他の子はすわる」
と、松藤氏は、教えてくれた。
 そこで、今日の指名なし自己紹介でも、
「誰か話し出したら、他の人はすわってください」と言っておいた。
 休み時間をはさんで、自己紹介をすわると、十数人の子が一斉に立つようになった。最初と大違いである。
 ただ、今度は、自分から言い出すのにためらってしまうようだ。
 時間がなかったので、明日へ持ち越しとなった。
 ところで、ノートにメモしてきてた子は、次のように自己紹介した。
「延壽和成といいます。4人家族です。8才になります。趣味はサッカーのテレビを見ることです。……好きな科目は体育です。嫌いな科目は国語です。1年 間お世話になります。よろしくお願いします。」…は間(ま)だ。
 延壽くんが言い終わって1,2秒後、ピピピッーと鳴った。
「わぁ~!」という歓声とともに拍手が鳴った。まさに練習の成果だ。

(1998.4.11)