怒れる荒井

 新しい学校に来た1回目の職員会議で、反対意見をいっぱい言ってしまった。(「~しまった」と書いてるが、後悔してるわけではない。)
 なぜか?それは、給食のパンのことである。
 大阪市はおかしな所で、パンは持って帰ってはいけないことになった。(実を言えば、O157が発生する前から、給食は持って帰ってはいけないことになっていたそうだ。ペットのエサとしては、いいそうだ。要するに、持って帰った給食で、食中毒などがおこっても、教育委員会が責任をとらなくていいようにするためである。
 現在、多くの学校で、残った山のようなパンが捨てられている。
 しかし、子どもに、ゴミのようにパンを捨てさせるわけにはいかない。
 そこで、現在の学校では、ビニール袋にパンを入れ、給食室のポリバケツに、各教室のパンを集めていた。そして、それらのパンをあとで、給食調理員さんがゴミ捨て場へと運んでいってたのである。
 さて、それが「給食調理員さんに申し訳ないので、子ども達にゴミ捨て場まで持って行かそう」という案が、健康教育部から出された。
 私は、即座に反対した。こんなことは放っておけない。
「パンをゴミ捨て場に持っていかすなんて、異様です。だから反対です。」
 では、具体的にどうしたらいいのか、も問われた。代案である。
「教師が持っていくようにすれば、いい。」と言った。
 それから、30分近く、論争(?)が続いた。
「現実には、パンを捨てているのだから、子どもにそれを教え、残さないように 指導すべきだ。」という意見も出た。
「きれいごとを言ってもしかたない。」というのも、あった。
 他のことで現実を教えること、それは大事だ。
 しかし、「子どもが残すから捨てないといけない」という論理は、根本的に間違っている。「それは、子どもに罪悪感を与える教育です。」と、私は言った。(なんか一人で戦ってる気分だった。おい、もっとみんなで反対しろよ、という思いだ。)
 そもそも、なんで捨てなくちゃいけないんだ。食べられなかったら、持って帰ればいいのだ。でも、それが市のお達しで、できないのだ。それは、子どものせいではない。あえていうなら、学校の責任だ。
 それをあたかも、パンが残るのは、「子どもが食べないからだ」という理屈にすりかえる。なんて、教師は鈍感なんだ。
 他の先生の意見の言い方も気に入らない。「提案者が一番、つらいと思うんですが…」なんて言う。反対意見を言う時は、もっと自分が泥をかぶらなくちゃいけないんだ。これこそ、きれい事ではないか。 

(1998.4.15)