どんどん間違えていい

 10のかけ算を次のように、導入していった。
 まずは、教科書もノートも出ていない状態から。
『10円が3枚あります。何円ですか。言える人、手をあげなさい。』
「30円です。」
『その通り。えらい、よく出来たね。』
『では、10円が8枚あります。何円ですか。ノートに答えだけを書きなさい。』「80円です。」
『80円と書いた人?』ほとんどの子の手があがります。
「その通り。」
 ここで、80円の正解を言ったのは、昨日まで3日間休んでいた子だ。2年の時から不登校気味な子のようだ。そのため、学力も低い。
『次はもっと難しいです。10円が2枚あります。何円ですか。式と答えを書きなさい。』
 解き方を少しずつレベルアップさせているのである。
「10+10=20、答え20円。」
 えっという雰囲気。しかし、これも正解なのである。
「10×2=20、答え20円。」というのも、もちろん正解である。
『今度は超難しいです。7枚の10円があります。何円ですか。式と答えを書き なさい。』  
「50+20=70、答え70円です。」
『こう書いた人。』あと3人手があがった。
『これは違います。どうして違うか言える人、手をあげなさい。』
 数人しか、手があがらなかった。
『全員起立。どうして違うのか言えなければ、間違えた人と同じことです。どうして違うか言える人、すわりなさい。』
 5,6人、立つ子が残った。座った子を指名した。
「50円とか20円とかは、問題に出てこないから。」
『そう、その通りです。問題に出てこない数字は使ったらいけないのです。みなさん、これはいい勉強をしましたね。間違えた○○さんに感謝しなくてはいけません。』
『算数というのは、間違えた答えから、いっぱい学べるのです。ですから、どん どん間違えてください。』
 さて、この問題の式は、10×7ですが、7×10でもいいと思ってます。
 それは、かけ算というのが、式の順序を変えても計算できるからです。
 意味としておかしくても、問題にある数字を使って答えが出るのですから。
 少しご検討ください。

(1998.4.16)