熊本の椿原正和氏が、教材分析の原則として、次のことをあげられている。
原則1:発問づくりはすべての言葉を辞書で引いた後にせよ。
まず、すべての言葉を「辞書でひく」という教材解釈をしてから、発問づくりをすべきだ、と言われているのです。
そこで、東京書籍の6年上の教材「父さんの宿敵」の言葉調べをしてみました。 やり始めると、まず、のっけの題名にある「宿敵」という言葉で、ひっかかってしまいます。
「年来のかたき。以前からの仇敵。」(角川『国語辞典』)
「〈宿は以前からの意〉年来の敵。前前からの敵。」(明治書院『国語辞典』)
宿(やど)に敵がいて、なんで「以前から敵」になるのかというと、「宿」には「以前から」という意味が含まれるということです。
こうなると、「宿」という漢字を調べたくなります。
【宿】①やど。やどや。②やどる。とまる。③とめる。とめておく。④とのい。⑤もとからの。⑥前の晩からの⑦経験をつんだ。⑧星座。
(旺文社『漢和辞典』)
あとはまりそうなのは、⑤の「もとからの」という意味が近そうです。
「宿」のつく漢字も調べてみました。
宿痾(長い間持っている病気。持病)・宿悪(つもりつもった悪い行い)・宿意(①まえから持っていた考え②まえまえからのうらみ)・宿因(生まれるまえからのやくそくごと。因縁)宿駅・宿怨(①長い間心にいだいてつもったうらみ②いつまでもうらみに思うこと)・宿縁・宿願・宿業・宿恨・宿舎・宿主・宿将・宿酔・宿世・宿題(①まえもって出しておく問題②あとで解決しなければならない問題)・宿直・宿敵(まえまえからのかたき)・宿場・宿泊・宿弊・宿坊・宿望・宿命(生まれるまえからきまっている運命。さけることも、かえることもできない運命的なもの)・宿夜・宿世・宿直・宿借り・宿帳・宿賃・宿主・宿屋・寄宿・下宿・止宿・投宿
旺文社『漢和辞典』には、次の中国の詩も載っていました。これを覚えていて朗々と言えたら、かっこいいでしょうね。
宿昔(しゅくせき)青雲(せいうん)の志(こころざし) 磋砣(さた)たり白髪(はくはつ)の年(とし)
誰(たれ)か知(し)らん明鏡(めいきょう)の裏(うら) 形影(けいえい)みづから相(あい)憐(あわれ)れまんとは
意味は、まあ調べてみてください。私も35歳、気をつけなくては。
(2000.4.5)