和俗童子訓

 山口小学校の隂山英男氏が、新刊を出しました。

『本当の学力をつける本~学校でできること 家庭でできること~』文藝春秋

 隂山氏の実践が、約240ページにわたって、詳しく書かれています。
 教育的に質の高い情報も載っています。

 江戸時代に貝原益軒が書いた寺子屋の指導書に「和俗(わぞく)童子(どうじ)訓」というものがあります。これは今日読んでみても、様々な示唆を与えてくれます。
 以下、岩波文庫『養生訓・和俗童子訓』に収録されている一部を抜き出します。(中略:荒井)
・凡(およ)そ小児(しょうに)の教えははやくすべし。しかるに凡俗(ぼんぞく)の知なき人は、小児をはやくおしゆれば、気くじけてあしく、只、其(その)心にまかせてをくべし、後に智恵出(いで)でくれば、ひとりよくなるといふ。是、必ずおろかなる人のいふ事なり。比(この)言葉大なる妨げなり。
・古人は小児のはじめて食し、ものいふ時より、はやくおしゆ。おそくおしゆれば、あしき事を久しく見ききて、先入の言、心の内にはやく主となりては、後によき事ををしゆれども移らず。
・婦人及び無学の俗人は、小児を愛する道をしらず、姑息のみにして、ただうまき物を多くくはせ、よき衣をあたたかにきせ、ほし`ままにそだつるをのみ、其子を愛するとおもへり。
・凡そ、小児を安からしむるには、三分の飢えと寒とをおぶべし。
(中略:荒井)
 貝原益軒の指摘は、つまるところ子どもを甘やかせることなく、はやくから大切なことをきちんとしつけなければいけないという内容です。

 最近、高学年を教えていて、特に、貝原益軒の指摘に納得してしまいます。
 低・中学年のような素直な時期に、基礎基本の学習や躾をしっかり教えておかないといけない、と思うのです。
 中学・高校と比べれば、小学校の高学年もまだ幼いとは言えるのですが、素直な気持ちを無くしつつあると、大切なことが身体や心の芯にまでは入っていかないような気がします。
 だからといって、我々教師は、子どもの過去に戻って教えられるわけではありません。まずは今の現状から、出発していくしかないのです。
(『和俗童子訓』はホームページにも載っていますよ。)

(2002.4.19)