自尊感情を高めるために

 ローゼンバーグが1965年に作成した「自尊感情尺度表」です。

1)私は他の子どもと同じぐらい大切な子どもだと思う。
2)自分にはいくつかよいところがあると思う。
3)自分はまるでダメだと思う。
4)私は他の子どもと同じようにいろいろなことができる。
5)自分のことであまり自慢できることがない。
6)私はいろいろなことをうまくやれると思う。
7)私は今の自分のままでよいと思う。
8)もう少し自分を尊敬できたらいいと思う。
9)時々自分は役に立たないと思う。
10)自分は悪い子だと思ってしまう。
大場寿子・巻頭言『特別支援教育教え方教室2010年11月号』(明治図書)より

 上記の尺度表は、①あてはまらない ②ややあてはまらない ③どちらともいえない ④ややあてはまる ⑤あてはまる で選択するようです。
 大場氏は、前述の巻頭言で、自尊感情がある子の特徴を書かれています。

①情緒が安定。 ②責任感がある。 ③社会的な適応能力が高い。
④逆境にも強くいじめに屈しない。 ⑤他人の目を気にしない。失敗に動じない。
⑥悪い仲間の誘いを断る力もある。
 よって、子どもは、自分の自尊感情が未熟なまま大人になると、自分も他人も大事にできない。結果として様々なトラブルに巻き込まれるリスクが高くなるのだという。自尊心を育てることは、発達障がいのあるなしにかかわらず、すべての子どもの課題である。

 河田孝文氏は、自尊感情を高めるには、子どもに成功体験を得させればいいと書いていました。
 谷和樹氏は、『現代教育科学2010年10月号』で、自尊感情と自己肯定感の違いを書かれていました。

 自己肯定感とは、他者からほめられ、認められることによって育つ感覚である。自尊感情とは、自己肯定感を育まれた結果として生じる「できないことだってあるけど、俺だってそこそこはやれている」という現実的で確かな実感である。無条件に「自分は何でもできる」と思うことではない。

 千葉大学教授の明石要一氏が『心を育てる学級経営2000年7月号』の中で、日本の子どもが世界の子どもと比べて、自尊感情が低いことを報告しています。

 さらに核心の「誇れるもの」について「誇れるものはない」と答えたものは、日本では約1割(9%)に達し、6カ国中際立って高い数値を示している。

 例え、できることがあっても、それを控えめに言うのが日本人の謙虚な国民性なわけです。でも、そうとも言ってられないようです。

 深谷昌志氏らの研究によれば、日本の子どもたちは学業成績によって自分の将来を予測する。
 学業成績に自信を持つ一握りの子どもたちは明るい将来像を描くが、多くの自信を持てない子どもたちは「仕事で成功する」とは思わないし、「人から好かれる人になれる」や「幸せな家庭を作れる」とも思わない。
 そして、この学業成績への自信の有無は努力信仰によって支えられている。
 学業成績の高い人は自分は努力してそうなったと思っているが、一方学業成績の低い人は自分は努力をしていないと思っており、早くからあきらめてしまっている。
 臨床心理学の世界では「オリズム」という言葉がある。目標を高く掲げてそれらに向かって、挑戦するのでなく、最初から低いハードルしか掲げない人たちである。
(中略:荒井)自信を失い将来の希望を早くから断念し、明るい未来を描けないでいる子どもたちが多く出現している。
 日本の子どもたちは、学業成績によって全てが決められると思いこんでいる。学業成績が子どもたちの自尊感情の高さを決めている。

 今回、学校の研究では、道徳と人権教育を中心にして、自尊感情を高めようと考えています。
 でも、学力をつけ、成功体験を多くさせることこそが、自尊感情を高めるといえるかもしれません。
 本年度の研究を通して、先生方がそのことに気付くことができれば、次年度への流れへと続いていくかもしれません。

(2013.4.29)