光村図書『国語五 銀河』の物語「なまえつけてよ」を検討します。
登場人物は、次の通りです。
1)春花…小学5年生 2)おばさん…牧場の人
3)勇太…小学5年生、ひと月前に遠くの街から引っこしてきた
4)陸…勇太の弟、小学2年生 5)勇太のお母さん 6)近所のおばさん
最初、勇太が何年生かは、書いてないので分かりませんでした。
でもよく読むと、勇太のお母さんが「今度、同じ組になるの。仲よくしてやってね。」と言ってたので、春花の同級生だと分かります。
春花を中心にお話が進み、春花の心情だけが書かれているので、主人公は春花でいいでしょう。対役は勇太になるでしょう。
生まれたばかりの子馬の名前をつけてと牧場のおばさんに頼まれます。
「子馬に合った名前をつけてあげる。」
これが、春花の願いです。主人公は、何か願いを持っていて、その願いが物語りの中でどうなっていくかが話の中心になっていきます。
実は、春花の願いは、もう一つあります。この願いははっきりとは書かれてないので、裏の願いといってもいいでしょう。
はるかの裏の願いは、「勇太と親しくなりたい。」です。
教科書では、次のように書かれています。
勇太は、ひと月前に、遠くの町から引っこしてきた。
「今度、同じ組になるの。仲よくしてやってね。」
春花の家へあいさつに来たとき、勇太のお母さんはそう言った。
春花は、はい、と答えたけれど、実際には、どうしたらいいか、分からなかった。話しかけても、勇太はあまりしゃべらない。でも、陸とは楽しそうに遊んでいる。親しくなるきっかけは、なかなかつかめなかった。
この物語では、春花の表の願いはかなわないけれど、代わりに裏の願いがかなうのです。(『海のいのち』に似ているのです。)
子馬の名前を考えてそれを言おうとしたときに、子馬がよそにもらわれることを聞き、春花の考えた名前はつけられないままとなります。その次の日に、勇太は紙で折った馬をわたします。その馬には「なまえつけてよ。」と書かれていたのです。勇太のやさしい一面を知り、春花は勇太の親しくなるきっかけをつかんだのでした。
この物語、私はとってもいいお話だと思いました。
短いながらも、登場人物の機微がよく書かれています。
「がっかりさせちゃったね。せっかく考えてくれた名前、教えてくれる。」
「いいんです─。それなら、しかたないですね。」
春花は、子馬の鼻にふれたまま、明るい声でそう答えた。勇太と陸は、何も言わない。二人とも、こまったような顔をして、春花の方をじっと見ていた。
春花の言葉を朗読させてみたいです。
「いいんです─。それなら、しかたないですね。」
1文目と2文目の違いを朗読で表現できたら、このお話がよく読めていることになります。(音読と朗読の違いも授業では扱っておきたい。)
1文目は、あきらめ。がっかりした感じが出ているはずです。
「いいんです」の後の「─。」で気持ちを切り替え、「それなら、しかたないですね。」を明るい声で答えたわけです。
明るい声で答えてるけれど、その様子を見ていた勇太と陸には、春花ががっかりしていることが分かっているから、こまったような顔をして、春花の方をじっと見ていたわけです。
題名の「なまえつけてよ」は、牧場のおばさんの「名前、つけてよ。」のことではなく、勇太が紙で折った馬に書いた「なまえつけてよ。」のことだと分かります。
勇太は、名前をつけてほしいわけではありません。
そこには、別の思いが込められているのです。
その別の思いに春花も気づいたからこそ、「ありがとう。」と心の中でつぶやいたわけです。
このお話を授業してみたくなりました。
(2015.4.5)