やまなしをマンガで対比する

『赤旗 日曜版』で、2014年1月5日号~2月2日号までの全5回の連載で、宮沢賢治の「やまなし」のマンガが載りました。まんが家はますむらひろしです。
 文章は、「やまなし」のと全く同じです。全編に絵があるのが違うところです。
 五月と十二月で、それぞれ1枚ずつ絵を選んでみます。

 この2枚のコマを比べてみます。
 書かれている文章は、それぞれ次の通りです。

【五月】青びかりのまるでぎらぎらする鉄砲弾のようなものがいきなり飛び込んで来ました。
【十二月】トブン 黒い円い大きなものが天井から落ちて

 五月の絵は、鉄砲弾のようには見えません。
 この後、兄さん蟹が「はっきりとその青いもののさきがコンパスのように黒く尖っているのも見ました」。
 鉄砲弾に見えたのは、かわせみのくちばしなわけです。くちばしは青いのです。 一方、やまなしは「黒い円いおおきなもの」です。絵で見ると、爆弾が落ちてきたようにも見えます。
 ネットで調べてみても、「やまなしの実」は黒くありません。
 海中から見ると、逆光の関係で、黒く見えるのかもしれません。
 それとも、熟して黒ずんでいるのかもしれません。
 絵を対比してみると、かわせみにしても、やまなしにしても、水の上の世界から突然現れたものです。蟹たちには、どうしようもできない出来事です。
 ただ、尖ったものと円いものとの違いが絵を見ると、よく分かります。
 突然の来訪者が死をもたらせたり、恵みをもたらせたりします。
 それは自然の姿でもあります。台風は、大きな被害をもたらすとともに、雨という恵みも与えてくれるのですから。

(2015.7.29)