野口芳宏氏が『授業研究21 2007年6月号』の中で、陰徳について書いています。(「子どもの規範意識の育て方(第3回)「善行快感」を育てる」より)
「陰徳あれば必ず陽報あり」という格言がある。「人知れず善行を積んだ人には、良い報いが目に見えて現れる」という意味で、出典は「淮南子(えなんじ)」の「人間訓」の由である。「陰徳」というのは、「人に知れないように施す恩徳」という意味で、世間によく知られるようになる「陽徳」の対概念である。
人知れず行う善い行いは、他者からの賞賛を当てにしない。そして、善行をした自分自身が、「それでよかったのだ」と納得し「快感」を得るのである。「善いことをすれば、人が見ていようといまいと気持ちがいい」という感情は、人間的にかなり高度のものと言ってよい。
陰徳から快感を得られるかどうかが、ポイントのようです。
人間的にかなり高度なものと、野口氏が言っているぐらいですから、子どもが陰徳できるように教えるのは、そうとう難しいわけです。しかも、陰徳ですから、その子がそういう行為をできるようになったどうかを評価しにくいです。
さらに、間違った状態や不適切な環境は、誰でも気付けるものですが、正しい状態や適切な環境が陰徳によって維持されていたとしても、そのことに誰も気付けないかもしれません。そういうことにも気付ける力が必要なわけです。
(2015.8.9)