『新しい国語三下』(東京書籍)の「はりねずみと金貨」を読みました。
ウラジミール・オルロフが書いたロシアのお話です。
森のおくの草むらに、小さな金貨が落ちていました。
書き出しの一文です。
この金貨をはりねずみが拾います。
(わしももう年を取ったし、近ごろは冬ごもりのしたくさえ、たいへんになってきた。どこかでほしきのこでも買って、今年はのんびり冬をこすとしよう。)
はりねずみは年寄りであり、その願いは「冬ごもりのしたくをする」ことです。 若ければ、ほしきのこも買わずに、自分で収穫するのでしょう。 でも、年を取るとそれが大変なわけです。そこに金貨が舞い込んできたのですから、この金貨を使って、冬ごもりのしたくを買おうと考えたわけです。
この後、はりねずみは、4人の人物に出会います。
1)りす…ふくろいっぱいにつまったほしきのこ
2)からす…どんぐりの実で作ったじょうぶなくつ
3)くも…あったかくてやわらかくて、きぬのようにつやつやのあんだくつ下
4)子ぐま…小さなつぼに入ったはちみつ
はりねずみに金貨は必要なく、その金貨をあった場所に置いて帰るのです。
(2015.10.5)
「はりねずみと金貨」の主題は、分かりやすいです。
(金貨は取っときなよ……か。じゃが、何のために?ほしきのこはあるし、新しいくつもある。あったかいつく下に、はちみつまでもあるというのに。)
「そのお金はどこかにしまっときなよ。」と言ったのは、くつ下をくれたくもです。
私は主題をこう考えます。
人とのつながりがあれば、幸せに生きていける。
独居ぐらしの老人が、お金を貯めこんで生きるのは、人とのつながりが希薄だからです。お金にしか頼るものがないので、お金を貯めこむわけです。
では、人とのつながりは、どうやって作っていけばいいのでしょうか。
息せききって、かけてきたのは小さなくま。生まれたときからよく知っていて、遊びに来るたび、はりねずみが、お話を聞かせてやっている子ぐまです。もう日がくれるというのに、また、お話をせがみに来たのでしょうか。
小さなくまは、冬眠前に、はりねずみへはちみつを渡しに来たのです。
日頃から、子ぐまにお話を聞かせてやっているからこそ、はりねずみは、はちみつをもらえたといっても、いいでしょう。
人のために何かする、ということが人とのつながりをつくることをこのお話はちゃんと示しているわけです。
(2015.10.6)