『「学力」の経済学』の項目の中に「子どもはほめて育てるべきなのか」があります。子どもをほめることで、自尊心が高まり、それが自信や学習意欲につながり、学力も高まると、一般ではよく言われています。
著名な心理学者であるフロリダ州立大学のバウマイスター教授らが過去の研究をまとめた丁寧なサーベイによって、「自尊心が高まると学力が高まる」というそれまでの定説は覆されました。バウマイスター教授らは、自尊心と学力の関係はあくまで相関関係にすぎず、因果関係は逆である、つまり学力が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果」をもたらしているのだと結論づけたのです。
学力を高めることができれば、自尊心を高めることができると、私も考えていました。その逆もあるかもとは思ってましたが、それは否定されています。
悪い成績を取った学生に対して自尊心を高めるような介入を行うと、悪い成績を取ったという事実を反省する機会を奪うだけでなく、自分に対して根拠のない自信を持った人にしてしまうのです。
根拠のない自信を持った人は、社会に出て、ちょっとの失敗にめげてしまいそうです。会社に入って、数ヶ月で辞めてしまう新入社員が出るのも、自尊心を高める保育や教育が原因なのかもしれません。
何をほめるべきかをよく思案する必要がありそうです。
(2015.10.18)