町の幸福論:問いと答えの段落

 山崎亮「町の幸福論─コミュニティデザインを考える」が東京書籍の六年国語の教科書に載っています。
 全8ページの全15段落の説明文です。
 ザッと眺めると、第14段落に、「このように」があります。

 このように、地域の課題を解決するためのコミュニティデザインは、そこに住む人々が主体性を持って解決に取り組むとともに、夢を持ってそのコミュニティデザインの未来のイメージをえがくことから始まる。

 要するに、地域の課題は、その地域の人が夢を持って主体的に解決していくしかない、と言っているのです。多分、これが筆者の主張でしょう。
 第14段落が答えの段落とするなら、問いの段落はどれかを探してみます。

 では、そのようなコミュニティデザインでは、どんなことが重要になってくるのだろうか。実際の町作りの事例から考えてみよう。

 これが問いの段落でしょう。「そのようなコミュニティデザイン」とは、どのようなものなのかは、その前の段落に載っているでしょう。
 前の段落の言葉を挿入して、問いの文を作ると、次のようになります。
「人々がつながる仕組みを作るコミュニティデザインでは、どんなことが重要に なってくるのだろうか。」
 ただ、この説明文は「コミュニティデザイン」という言葉が、かえって、書いていることを分からなくしています。
 そもそも「コミュニティデザイン」とは、何のことでしょうか。

 物やお金だけでは、町に住む人々の豊かさや幸福にはつながらない。そのときに重要になってくるのが「コミュニティデザイン」という考え方であある。コミュニティとは、何らかの人のつながりによる共同体ともいえ、同じ地域に住んでいる人、あるいは同じ興味を持つ人どうしによるものなどがある。人と人とがつながる仕組みを作り、「町を元気にしていこう」という目的のもとにコミュニティを組織していくのが、コミュニティデザインといえるだろう。

 なぜ「デザイン」が「考え方」なのでしょうか。
『大辞泉』で調べてみると、「目的をもって具体的に立案・設計すること。」という意味が載っていました。
 共同体の設計図といわれた方が分かりやすい気がします。
「人々がつながる共同体の設計図を作るには、どんなことが重要になってくるだろうか。」
 よく読むと、問いの段落の次の段落が、答えの段落なのかもしれません。

 まず重要になるのは、地域の住民たちが主体的に町作りに取り組むということである。コミュニティデザインの目的は、人のつながりを作ることにより、その地域の課題を解決することだ。

(2015.11.3)