池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点』に、「ウソをつかれないため」に、どちらを言った方がいいかという問題がありました。
①ウソをつかないでね ②ウソつきにならないでね
①は行動を制止しています。②は行動ではなく、その人の人柄に焦点を当てているわけです。さて、多くの人は②のように言われるとウソを言わないようです。
この現象は犯罪心理学の研究からわかってきました。そもそも犯罪者はなぜ罪を犯すのでしょうか。実は、好んで犯罪に手を染める人は少なく、止むに止まれず悪事に走ってしまうことが一般的です。
このとき「自分は本当は善良な人間だが、今回ばかりは特別だ」と自分の心に蓋をしています。つまり、「本来の人格」と「実際の行動」は別であるとするわけです。
裏を返せば、行動への否定は平気でも、人格への否定は平気ではいられなくなるということです。
「罪を憎んで人を憎まず」という諺は、上記のことを指しているわけです。
選挙でも、「投票することは大切です」というよりも、「有権者として振舞うことは大切です」と諭すと、投票率がアップします。
行動であれば、「今回、投票しないのは特別」と言い訳できても、有権者として振る舞いかどうかを問われると、投票すべきだと自ら考えるのでしょう。
(2015.12.31)