高森洋『すぐできる!「地震に強い家」にする80の方法』(2011.12講談社)のまえがきに、次の問いがありました。
ところで、みなさんは『3匹の子豚』という童話をご存じでしょう。
3匹の子豚がそれぞれわらの家、木の家、レンガの家をつくります。子豚をねらって現れた狼の吹く息で、わらの家は簡単に吹き飛ばされ、木の家も同様に吹き飛ばされてしまいますが、レンガの家だけは吹き飛ばされずに狼を撃退することができたという話です。
では、この3つの家で最も地震に強いのはどの家でしょう。
前に、「地震に強い建物」というタイトルで授業コンテンツを作ったことがありました。そのとき、最初に、高層ビル・普通の家・五重塔の画像を提示し、「地震に強い建物とは?」を問いました。そして、出前機を紹介し、耐震と免震の違いを扱ったのです。
そのときの最初の導入を『3匹の子豚』にした方が、意外性もあり、子どもにとってイメージしやすいです。
さて、上記の問題、正解はどれでしょう。
耐震的にいえば、レンガの家のようであり、免震的にいえば、わらの家のようでもあります。
それは、わらの家なのです。
意外に思われるでしょうが、「地震で家にかかる力は建物の重さの2割」と言われています。わらの家が最も軽いですから、地震のダメージも一番軽いものとなるのです。それに対して、童話では一番強かったレンガの家は重いですから、揺れの衝撃が最も強くなります。レンガを重ねただけの構造ですから、揺れに対する粘りもありません。レンガの家は風害には強いのですが、その重さゆえに地震には弱いのです。
『3匹の子豚』の狼は、台風や竜巻を象徴しているのかもしれません。
このお話はイギリス作です。イギリスやフランスでは、ほとんど地震がありません。でも台風や竜巻は起こるので、それに備えた家づくりとなったのでしょう。
日本でも、明治の開国以降、西洋を真似て、レンガ建築の家が多く建てられたそうです。
けれど、地震によって、レンガ建築の家は崩れたそうです。
レンガの家は、地震国日本には、向かない建築方法なのです。
沖縄の昔の家は、石造りの家が多かったのは、地震よりも台風の被害の方が大きいゆえでしょう。
こうして、地震に強い建物について調べてみると、いろいろと面白いことが分かります。けれど、授業として、何をねらうかが、まだ弱いです。
どんな建物が地震に強いか分かったとしても、子どもにはどうにもできないことなのですから。
(2016.4.5)