『学力研の広場』で「授業づくりに必要な5つの心構え」で連載をします。
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一以てこれを貫く
『論語』で語られる孔子の生き方である。
「一つの道理をもって行動せよ」ということだ。
学級や学校現場では、毎日、さまざまなことが起こる。
その場を仕切る教師には、常に一貫した行動原理が求められる。
指導者がぶれないからこそ、子どもたちはついてくるのである。
それは、授業についても当てはまる。
授業づくりに必要な5つの心構えを10回に渡って、連載する。
第一の心構え「全員参加」
全員参加をあきらめた授業をするのは、簡単である。
問いを出し、挙手する子だけを相手に授業すればいい。
「学力研」の正式名称は、「学力の基礎をきたえ どの子も伸ばす研究会」である。
どの子も伸ばしたいと思うならば、全員参加の授業づくりを目指したい。
「そうは言っても、40人近くいる子どもたちを全員参加させるなんて無理だ。」と思うかもしれない。
大丈夫。
無理を可能にするのが、道理である。
そもそも教師の発問が全員参加のための発問になっているのか
「過去と他人は変えられない。
未来と自分は変えられる。」
まず変えるべきは、40人学級という学校制度でも、子どもたちではない。
変えるべきは、教師の、そう、あなたの発問である。
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今日はここまで。
この後、一問一答の問いと、多様な答えの出るマルチ発問を紹介する流れとなります。
ただ、何学年のどの発問を取り上げるか、迷っています。
広場が10月号ですから、その時期以降に出てくる教材がいいです。
今回は、授業づくりの心構えを高学年と限定していないので、高学年以外から発問を見つけるといいかもしれません。
(2016.9.11)
原稿の続きです。結局、パッと思いつく発問を使ってしまいました。
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「りんごの生産地、日本一はどこですか。」
という発問では、「青森県。」という答えしか出てこないだろう。
この発問は、一問一答であり、一部の子しか答えられない。
「知ってる果物を書けるだけ書きなさい。時間は1分です。始め!」
と発問、指示し、列指名で1つずつ発表させていけば、多くの子が発言できるだろう。
その後、「3つの果物を選んで生産地ベスト3を調べましょう。」と指示して調べさせる。その後、先ほど発言してない子から発表させていけば、一時間の中で全員が参加して発言しているといえるだろう。
全員発言がなぜそれほど大切なのか
「高学年になると発言しない子が増えてくる。」
と、よく言われる。
それは、成長の証でもある。
自分が周りからどう見られるか、どう思われるかが気になるのである。
特に、学級が崩れてくると、目立つことは攻撃対象になりやすい。
目立っていいのは、大きな声で話していいのは、学級内の上位ヒエラルキーの子だけになってしまう。
全員発言を生み出すことは、学級内に平等な関係を築くための挑戦なのである。
それゆえ、全員発言を生み出すための発問は、多様な答えのある発問で必要でなくてはならない。(私はそれをマルチ発問と呼んでいる。)
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今回の原稿は、これまで書いたものを使わないで、改めて全員参加について考えながら書いています。
「全員発言を生み出すことは、学級内に平等な関係を築くための挑戦」という言葉も、今回、初めて思いつきました。
原稿を改めて書くことで、自分の考えを補強することができています。
授業づくりをすること、授業づくりについての原稿を書くこと、どちらも私にとっての教師修業になっています。
さて、原稿もようやく2ページ目に差し掛かったところです。
ここらで転が必要だなと思ってます。
どんな転になるかは、明日のお楽しみということで。(私自身もお楽しみです。)
(2016.9.12)
原稿完成しました。
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「ごんぎつね」導入でのマルチ発問
数回の音読ののちに、次の発問をする。
「ごんは、どんなきつねですか。」
ノートに「~きつね」と書かせる。
このとき、大切なのは、三つ以上書かせることである。
一つに限定すると間違えのない正確な答えを要求していることになり、子どもたちの思考をせばめることになってしまう。
「間違っていてもいいから、とにかく三つ以上書いてごらん。」と促すといい。
例えば、次のような意見が出るだろう。
・イモホリぎつね ・一人ぼっちのきつね
・しだのいっぱいしげった森の中にあなをほって住んでたきつね
・わるがききつね ・いたずらぎつね
・とんがらしぬすみぎつね ・一人ぼっちぎつね
・子ぎつね ・子どものきつね
・目つきの少しわるいキツネ ・しょぼしょぼぎつね
・ひどいきつね ・火をつけた悪いきつね
・どろぼうきつね ・穴の中でくらしているキツネ
・小さなきつね など
この発表(板書)のあと「この中であきらかにおかしいのはどれですか。」と検討すればよい。間違ってもいいことを前提にしているので自分の出したものにも反対していいのである。
このあと、「ごんのことをあなたはどう思うか。」「ごんのことを村人はどう思っているか。」「ごんのことをわたし(語り手)はどう思っているか。」を問うていく。(詳しくは、私のホームページ「教育考現学」をご覧いただきたい。)
全員参加を以てこれを貫く
心構えというものは、一朝一夕で身につくものではない。
また、心構えがあっても、それを支えるための方法を知らなくては、授業では使えない。
だからこそ、日々、わたしたちは学ぶ。
11月23日(祝)に、愛知教育大学の鈴木健二氏をお呼びして、授業づくり一日講座を企画している。鈴木先生には、教科書を使った授業づくりや道徳の授業づくりについて、具体的に話していただくことになっている。全員参加の授業づくりも学べるだろう。
詳しくは今月同封のちらしや、こくちーずを見ていただきたい。
現在、定員80名に対して63名の申し込みがある。参加を希望される方は、今すぐ申し込まれることをお勧めする。(早期予約・入金の特典もある。)
来月の原稿では「全員参加の授業づくりが生み出すもの」について、くわしく書く予定である。
(2016.9.13)