名をつけることによって認識

 野口悠紀雄『「超」説得法~一撃で仕留めよ~』(2013.4講談社)より。

「説得」とは、相手の決定を変えさせること、あるいは、ある行動をとるよう決心させることである。社会生活をしている限り、説得という行為から逃げることはできない。

  文章を書くことも自分の考えで相手に影響を与えようとしているので、一種の説得といえるでしょう。

 人間は、身の回りのあらゆるものに名をつけてきた。山、海、川、森、林などの地理的対象に固有名詞をつけた。天候も、雨や日照、温度などで微妙に異なる状況を、名で区別した。色や音にも名をつけた。そして、仲間である人間にも固有名詞をつけた。動物や植物にも、また、食物、製品、道具にも、町や建物にも命名した。目に見えるもの、形あるものだけでなく、抽象概念や感情にも名をつけた。人間は、名をつけることによって対象を認識し、それらを操作してきたのである。

「名をつけることによって対象を認識する」ことから、ヘレンケラーの言葉を知る場面を思い出しました。それまで、けだもののような振る舞いをしていたヘレンケラーが、サリバン先生に、「ものには名前がある」ことを教えてもらい、そこから人間らしくなっていくのです。
 語彙力を鍛えることは、より人間らしくするために必要なことなのです。

(2016.9.14)