学力研ニュースの連載②「授業づくりに必要な5つの心構え~全員参加の生み出すもの~」を書き上げました。
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情報多様化社会に合わせて
社会の授業で、「○○について知っていること」タイプの発問を出すことが多い。
例えば、「沖縄について知っていること」や「自動車について知っていること」などである。
インターネットやスマホが当たり前になり、テレビでは雑学系の番組が多く放映され、子どもによっては何度も海外に行っている時代である。
子どもたちは、本当に様々なことを知っている。それらの知識を有効活用すればいいのである。
「○○について知っていること」がたくさん板書され、発表されることで、子どもたちの内部情報が豊かになっていく。
教師は、あと出しジャンケンでいい。
発表されたものの中から、授業のねらいに迫れるものをいくつか選び、深く突っ込んで考えさせていけばいいのである。
物事を因果関係で分析できる教師だからこそ、あと出しジャンケンでも、堂々と勝っていける。
算数でも全員参加の授業は可能である
現在、私は、大阪府高槻市の小学校で五年の算数を教えている。
例えば、練習問題8問をさせるとき、3問か4問目かでノートを持ってこさせ、○か×をつける。ここで、全員のノートをチェックするわけだ。
そして、最後まで解けた子から1問ずつ順に、板書させていく。
どうしてもできない子は、板書されたものがヒントとなる。
ちなみに、私は、途中の1問しか見ていないので、板書された子どもたちの解が合っているとは限らない。できる子も油断できないわけだ。
とはいっても、板書する子は算数が得意な子に集中する。
そこで単元終了時の練習問題をクラスの人数分用意し、自分の出席番号の問題を板書させるようにしている。
「4分の3たす6分の5は、12分の9たす12分の10は、12分の19は、1と12分の7です。同じ人?」
というように、板書したものを本人に読ませていく。
この時、同じ人で手が挙がるか挙がらないかで、そうとうどきどきするそうである。
計算のやり方の手順を列指名で、次々言わせていくこともある。
例えば、5と10分の3ひく3と6分の5の計算では、次のように問う。
先生「分母のちがう分数のひき算です。最初に何をしますか。原田くん。」
原田「通分をします。」
先生「分母を何にすればいいですか。」
宮本「30です。」
5と10分の3の10の下に30を書き、
先生「何倍ですか。」
中山「3倍です。」(×3と書き込む。)
3と6分の5の下に30を書き、
先生「何倍?」
池上「5倍。」
先生「5と10分の3の10は何になる?」
城野「5と30分の9。」
先生「3と6分の5は?」
島本「3と30分の25。」
先生「分子の9から25は引けますか。」
岡本「引けません。」
先生「どうしますか。」
石田「5と30分の9をくり下げます。」
先生「何になりますか。」
小島「4と30分の39になります。」
このあと、ひき算のつづきをし、約分もさせて、答えまで出させる。一問のやり方を確認することだけで、十数人の子に発言させることができるのである。
欲求の4タイプが授業を左右する
岡田斗司夫/FREEex『人生の法則~欲求のタイプで分かるあなたと他人~』(2011.2㈱ロケット)に、4タイプ判定テストがある。
4タイプとは、注目型・理想型・法則型・指令型である。
それぞれのタイプの特徴を抜粋すると、
【注目型】
情熱、すなわち自分の熱意や「やる気」が何より大事なタイプ。人から注目されたい、認められたい、頼られたいという欲求が強い。
【理想型】
自分の考えているとおりに物事をやり遂げることにこだわる。結果よりプロセス、目的より手段を重要視するタイプ。
【法則型】
物事のしくみ、法則を自分なりに理解したり発見したり推測したり仮説を立てたりすることに喜びを感じるタイプ。
【司令型】
勝ちたい!負けたくない!勝負にこだわる。頑張り屋で、常識人のしっかり者。
判定テストの結果、私は典型的な法則型であった。人の決めたルールは守らなくても、自分の決めたことは守る。
さて、全員参加の授業づくりをする上で、子どもたちの欲求のタイプがそれぞ
れ違うことも意識しないといけない。
注目型の子は、自分が分かることなら、何度でも発表したがる。このタイプの子たちに引っ張られてしまうと、発言は一部の子(注目型の子)に偏ってしまう。
全員参加の授業は、教師の発問・指示によって調節・統制しなくてはいけない。
「おまわりさんはどんな仕事をしますか。番号を打って、ノートに箇条書きします。
3つ書けたら三年生レベル、5つ書けたら四年生レベルです。始め。」
(四年社会・けいさつしょの仕事)
注目型は発表された意見を取り上げると喜ぶ。司令型はノートに数多く書くことに意欲を燃やす。理想型と法則型は、数よりも質を追求した意見を書く。
全員参加の授業づくりによって、注目型だけでなく、4タイプの子たちの意見が交流され、豊かな授業となっていくのである。
来月号では、第二の心構え「個を鍛える」について書く予定である
(2016.10.8)