『小学社会5年下』(平成23年度版、日本文教出版)に「情報を取りまく問題」を扱っているページがあります。例えば、
・知っている人の情報が流されている。
・知らない人から不正な請求をされる。
・けいじ板にいわれもないことを書きこまれる。
・チェーンメールなどの有害な情報が送られてくる。
などの問題が書かれています。
さらに、「情報のあつかい方」として、情報を送る側と情報を受け取る側で、気を付けないといけないことも書かれています。
【情報を送る側】・個人の情報やひみつを流さない。
・正確な情報を送る。
・人がつくったものを勝手に使わない。
【情報を受け取る側】・必要な情報をきちんと選んで使う。
・必要のない情報は受け取らない。
・できるだけ、自分で直接確かめる。
授業をするなら、もう一歩突っ込んで、情報を受け取る側の問題として、確証バイアスを取り上げて扱いたいのです。
Wikipediaによると、次のように書いています。
確証バイアスとは、認知心理学や社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。認知バイアスの一種。また、その結果として稀な事象の起こる確率を過大評価しがちであることも知られている。
例えば、タバコを吸っている人は、タバコが体に悪いというニュースや話を見たり聞いたりするのを知らず知らず避けてしまい、タバコを吸っても健康で長生きしているニュースや話に関心を寄せることが多いです。
わたしたち教師が授業をするときも、伝えたいねらいに沿った事例を集めて授業してしまいます。
A型の血液型は几帳面であるという通説についても、几帳面な人がA型だと知れば「やっぱり」と思い、ずぼらな人がA型と知ると「めずらしい」と思ってしまうのも、確証バイアスです。
翻訳するときに「情報」という言葉を作ったといわれている森鷗外は、軍医でもあり、脚気という病気は細菌によるものだと信じていました。けれど、「米飯より麦飯を食べた方が脚気にならない」という情報を聞きながら、それらの情報や忠言をことごとく無視し、むしろ誹謗し、米飯をすすめたことで、日露戦争で多くの病死者を出しています。
確証バイアスで情報を扱っていないかを振り返る必要があるのです。
(2017.1.1)