『学力研の広場』の連載5回目の原稿です。
今回、春日井講座が終わったばかりで、少し気が抜けているところがあり、なかなか書くのに、とまどってしまいました。
タイトルは「討論で集団を鍛える」です。
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第三の心構え「集団を鍛える」
「仲良し軍団はチームワークと呼べません。ユニフォームを着ているときは、勝利という仲間たちとの共通目標の下、仲間のために投げます。
しかし、ユニフォームを脱いだら、個を鍛えるために努力します。
いつでもどこでも『仲間のために』を貫くことは、個の成長を生まず、結果として本当のチームワークにはならないのです。」
元・野球選手の桑田真澄の言葉である。
ただ集まって、仲よくしているだけの集団をつくるだけなら、「鍛える」は必要ありません。(「集」は鳥が木に集まる様子)
授業の中で「集団を鍛える」とは、授業のねらいに迫るために、個々の知力を出し尽くさせ、お互いを高め合う関係を築くということです。(「団」には、推しはかるの意味もあり。)
賛同・共感から反対・否定へ
五年の社会で情報を扱う単元がある。
「情報を取りまく問題には何があるか。」
まずは、マルチ発問で、全員に書かせ、発言させていく。
・プライバシーが侵害される。
・うその情報がある。
・不正な請求がある。
・音楽や映画がただで観られたりする。
三学期ぐらいになると、ずいぶんと個が鍛えられているので、なるべく他の子が書かないような意見を書こうとする。
自分が思いつかない意見が出ると、すごいと思いつつ、悔しいという思いも出てくる。集団で高め合う良さである。
この発表だけで終わっては、集団を鍛えるところまではいかない。
鍛えるには、賛同や共感以外に、反対や否定(批判)が必要になってくる。
(自己否定はまだまだ先の要求になる。)
選択理由を発表し討論に備える
そこでセレクト発問をする。
「情報を送る側と受け取る側では、どちら側の責任がより重いだろうか。」
まずは、自らの立場を明確にしなくてはいけない。
多様な答えのあるマルチ発問と、対極に位置するのがセレクト発問である。
二者択一。
そして選んだからには、その選択理由(根拠)を考え、発表することになる。
「ぼくは送る側の方の責任が重いと考えます。なぜなら、まちがった情報を流したら、それを受け取った人が困るからです。」
「私は受け取る側の方の責任が重いと考えます。なぜなら、情報はいろいろあるので、どれを選ぶかを決めているのは、受け取る側だからです。」
最初の頃は、右のような選択理由を発表する定型文(アウトライン)を教えておく必要があるだろう。
こうした発表のあと、討論に移る。
集団を鍛える一つの方法が討論である。
討論はすぐにはできない
討論では、指名なしで、自分で立って、賛成意見を言ったり、反対意見を言ったりし合う。
指名なしの討論では、
①発言者が譲り合いながら自ら立つ。
②話の流れに沿って発言する。
③自分の出番をわきまえる。
ことが大切になってくる。
発言者が数人立ったときに、お互いの顔を見ながら、サッと譲り合い発言する。そのときに、初めての発言者を優先したり、自信のない発言者を優先したりする。
ある意見に反対意見が出たときは、その意見に賛成や反対する意見に絞って、話を進めていく。発言が途切れたら話題を変えてもいいが、
「少し話が変わるのですが、…」
と言って、意見を変えることを告げる。
そして、一番むずかしいのが、自分の出番をわきまえることである。自分の意見に自信がなければ早めに発言し、自信があるなら、あとの方に発言するのである。
もちろん、このような指名なし討論が、いきなり出来るようにはならない。
最初は、教師が何度も口を出していく。
「石田さんが初めてだから、優先して。」
「話題を変えるなら、そう言いなさい。」
「自信がない人は早めに発表しなさい。」
このように口を出しながら、討論が終わった後に、
「討論の途中で、先生が口を出しましたよね。それを先生に言わせてるようじゃ、ダメなんですよ。」
と指摘するのである。
子どもたち自身で討論を仕切っていけるように仕組んでいくのである。
鍛えられた集団が生み出すもの
集団を鍛えるならば、個々人だけでは解決できないような問題に取り組ませないといけない。
その一つの方法が討論なのである。
討論を通して、賛成・反対のさまざまな意見が熱く語られる中で、個々人の考えが深まり鍛えられていくのである。
昨年の11月に行った学力研&鈴木健二・一日講座は、80人を超える方に参加し
ていただくことができた。
一番大変だったのが、参加者は増やすことであった。
一月から宣伝していたが、なかなか集まらない。
チラシを発送し、ネットで宣伝し、そして、直接、声をかけてお誘いした。
サークルのメンバーの中には、10人以上の同僚を誘ってくれた人もいた。
講座参加者に渡す特典冊子も作った。
サークルメンバーが原稿を計33本書き、百五十ページを超える冊子ができた。
講座当日は、朝から集まり、会場準備をした。そして、講座では、受付・司会・資料配付・タイムキーパー、そして模擬授業など、すべてをサークルのメンバーで行い、参加者に満足してもらえる講座を取り仕切ることができた。
もちろん、鈴木健二先生のお力があればこそだが、私一人だけでは、これだけ盛況な講座にすることはできなかっただろう。
何か大きなことを成し遂げるのには、個人の力では限界がある。集団を鍛えることで、学級を飛躍させることができる。
(2017.1.9)