「くじらぐも」の教材研究

『こくご 一下 ともだち』(光村図書)のなかがわりえこ作「くじらぐも」の登場人物は、次の通りです。

1)一ねん二くみの子どもたち 2)くものくじら 3)せんせい

 中心人物が誰かは少し迷いましたが、たぶん、一ねん二くみの子どもたちでしょう。なぜなら、子どもたちには願いがあったからです。

「ここへ おいでよう。」
みんながさそうと、
「ここへ おいでよう。」
と、くじらも さそいました。
「よし きた。くもの くじらに とびのろう。」

 子どもたちの願いは、くものくじらと一緒にいることです。難しくいえば、距離を縮め、相手と同じ場所にいたいわけです。
 異種族との間にある距離を縮めるために必要なことが、この物語の主題です。
 そのために、子どもたちは、次の行動をとります。

 みんなは、手を つないで、まるい わに なると、
「天まで とどけ、一、二、三。」
と ジャンプしました。でも、とんだのは、やっと三十センチぐらいです。
「もっと たかく。もっと たかく。」
と、くじらが おうえんしました。
「天まで とどけ、一、二、三。
 こんどは、五十センチぐらい とべました。」
「もっと たかく。もっと たかく。」
と、くじらが おうえんしました。
「天まで とどけ、一、二、三。」
 そのときです。
 いきなり、かぜが、みんなを空へ ふきとばしました。

 最初に、みんなで手をつなぎました。これは、異種族との距離を縮めるには、同種族間の協力が必要ということです。同種族間での意見がまとまらなければ、異種族との交流は難航するでしょう。
「天まで とどけ、一、二、三。」と、3回もジャンプしています。
 1回のジャンプで何とかなるほど、異種族間の交流は簡単ではありません。
 3回目、風が吹きました。みんなの努力に対して、風が協力してくれたのです。
 このあと、子どもたちと先生は、くものくじら(くじらのくもではない)に乗って、楽しい空の旅をします。
 でも、お昼になったことを気付いた先生の声で、くじらは学校へ戻り、みんなを降ろします。現実の生活へ引き戻す役を大人の先生にさせているのです。

(2017.6.17)

「くじらぐも」の書き出しです。

 四じかんめのことです。
 一ねん二くみの 子どもたちが たいそうを して いると、空に、大きな くじらが あらわれました。まっしろい くもの くじらです。

 この3文だけで、登場人物・場所・いつかがほとんど分かります。
 場所は、小学校の運動場でしょう。ただ、本文には「運動場」と書いていません。「どの言葉から分かりますか。」と問うことができます。
「たいそうをしていると」だけでは、「体育館」でもいいわけです。「空に」があるので、外だと分かるのです。
 教科書には、運動場で先生と一緒に子どもたちが体操をしているさし絵があります。当然、このさし絵を見て、答える子もいるでしょう。
 それも認めながら、文章の中に書いてある言葉も探させることが、将来的に言葉にこだわることや論理力を高めることができるのです。
「「くじらのくも」ですか「くものくじら」ですか。」
も問いたい。くじらのくもなら、くじらの形をした雲ということです。
 ここは、「くものくじら」でなくてはいけないのです。題名の「くじらぐも」は、本文中に1回だけ出てきます。それも探させたいです。

(2017.6.18)

「くじらぐも」を読み、自分なりの教材研究はできました。
 ここで、他の人の実践を見てみます。
 これを逆にすると、いつまでたっても、自力での教材研究ができなくなります。
 まずは、自分で考えてみて、それから他の人の実践を見ると、自分と他人の読み方の比較ができるのです。
『国語教育 2014年9月号』に、頓所陽子「教材「くじらぐも」の事例研究~正しく読み取ること 自分の考えを書く学習へのステップ」が載っています。

発問 「先生がふえをふいて、とまれのあいずをすると、くじらもとまりました。」
   くじらは、先生の合図で止まりました。みんなは、先生の合図で止まりましたか?止まらなかったですか?                    (板書する。)

 教科書には、1年2組のみんなが止まったかどうかが直接は書いていません。
 ただ、「くじらは とまりました」ではなく、「くじらも とまりました。」だから、「くじらも(みんなと同じように)とまりました」と読めるわけです。
 1年生では無理かもしれませんが、
「もしみんながとまってなかったら、「くじらも とまりました」ではなくて、「くじらは とまりました」になるから、みんなもとまりました。」
と言えれば、すばらしいわけです。(将来的に、そこを目指さしたい。)

(2017.6.19)