願いが弱点ともなる

『小池一夫のキャラクター創造論~読者が「飽きない」キャラクターを生み出す方法~』(2016.7ゴマブックス)に、キャラクターの願いについて書かれています。

 人が《願い》を叶えるために奮闘する姿は、多くの人の心を動かします。
 それは、実在の人間でも、架空のキャラクターでも同じです。
「できたらいいな」
というキャラクターの《願い》に、読者は感情移入し、心を動かされます。

 物語の中心人物は、必ず願いを持っています。その願いを叶えていく過程や行動が物語を築いていってるのです。

「おまえの願いは何ンだ」
と、キャラクターに問いかけると、そのキャラクターが
「何を望んでいるのか」
「今後どうしたいのか」
「どういう人になりたいのか」
「どんな価値観で動いているか」
と言ったことがわかります。
 しかし、これは同時に、そのキャラクターについて
「今、何が足りないのか」
「大切なものは何なのか」
「何に目がないのか」
「どんなコンプレックスを持っているのか」
「絶対できないこと、やらないことは何か」
と言ったことも、明らかになります。
 キャラクターの《願い》がわかれば、《弱み》もわかってしまい、それを敵に利用されてしまったりもするのです。

「願い」は「弱点」でもあるわけです。
「ごんぎつね」であれば、ごんの最初の願いは「さびしさをまぎらわせたい」でした。でもこれは、「ひとりぼっち」である弱点を持つゆえに生まれたものです。
「兵十につぐないをしたい」という願いも、さびしさをまぎらわせるために行ったいたずら(弱点)が原因となっています。
 やがて、ごんはつぐないだけでは満足せず、「兵十と分かり合いたい」と願うようになります。でもその願いこそが、死への引き金ともなるものなのです。
 村人に見つかれば、殺されるかもしれないという不安をごんは常に持っています。それは、記述の端々に書かれています。
 そんなごんが、最後の場面では、兵十のうちの中に入り、土間にくりを固めて置きます。願いの大きさが、弱点となり、悲劇へとなっていったのです。

(2017.7.17)