戸を叩く狸と秋を惜しみけり

『新しい国語三下』の「日本語のしらべ─秋」の見開き2ページの右側には、三木露風の「赤とんぼ」の詩があり、左には4つの俳句が載っています。

1)よろこべばしきりに落つる木の実かな(富安風声)
2)いつせいにきのこ隠るる茸狩(鷹羽狩行)
3)街道をきちきちととぶ螇蚸(ばつた)かな(村上鬼城)
4)柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺(正岡子規)
5)戸を叩く狸と秋を惜しみけり(与謝蕪村)

 1番は、木が風に揺れている様子を喜んでいると表現しています。擬人法ともいえるし、比喩ともいえます。
 5番の俳句は、狸が出てくるので、面白いです。
「戸を叩いているのは、誰ですか。」
と聞けば、多くの子は「狸」と答えるでしょう。
 でも、狸は本当にいるのでしょうか。戸を叩くも、1番の「よろこべば」と似た表現ではないでしょうか。
 例えば、風が戸をゆらす音を「戸を叩く」と擬人化してるともいえるのです。
 狸のような動物も、冬よりも実りの秋の方がいいでしょう。戸を叩く風の音を狸が秋を惜しんで腹鼓を叩いていると音に例えたのでしょう。

(2017.8.15)