主語・述語・修飾語を扱っても、他の国語教材の中でも使っていかなければ、その扱い方や見つけ方は定着していかないでしょう。
そこで、高学年の教材を読みながら、どう扱えるかを検討してみます。
例えば、『新しい国語五』(平成27年度版、東京書籍)の宮沢賢治「注文の多い料理店」の書き出しの文は、次のようになっています。
二人のわかいしんしが、すっかりイギリスの兵隊の形をして、ぴかぴかする鉄ぽうをかついで、白くまのような犬を二ひき連れて、だいぶ山おくの、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを言いながら、歩いておりました。
これほどの長文になると、文節に分けるのは面倒です。
述語は、文末の「歩いておりました」です。歩いていたのは、二人のわかいしんしですから、主語は「しんしが」になります。二人だから「しんしたちが」が正しいかもしれませんが、そのように変換していいかどうかは分かりません。
「しんしが」を主語にすると、それに対応する述語が「歩いておりました」以外にも見つかります。
「して」「かついで」「連れて」「言いながら」も述語といえるでしょう。
さて問題は、この文で、主語・述語を見つける必要があるかどうかです。
特に必要あるとは、私には思えません。
ところで、今回「注文の多い料理店」を選んだのは、二人のしんしが、料理店の要求を自分たちの都合のいいように解釈するお話だからです。
要するに、店の要求(注文)が、誤解をまねく文だ、ということです。
【当軒は注文の多い料理店ですから、どうかそこはご承知ください。】
この文を2文にすると、一文目は「当軒は注文の多い料理店です。」となります。「料理店です」が述語、「当軒は」は主語です。この主語と述語の関係は、誤解の余地がないです。
では、「注文の多い」を「多く注文する」と変えてみます。
「注文する」が述語になるとすると、注文する主語は何でしょう。
しんしたちは、当然、その主語を自分たちだと考えたでしょう。
「しんしたちが多く注文する(できる)。」
でも、このお話を後ろの方まで読んでいくと、
「料理店が多く注文する。」
となっているわけです。
「題名の「注文の多い料理店」を「注文する」を述語にして書き換えてごらん。」
普通なら、「料理店で多く注文する。」となり、主語は「お客が」となります。
でも、このお話が分かってしまうと、「料理店が多く注文する。」と「料理店が」が主語だと分かるのです。
主語が何であるかを検討させることで、話が見えてくるわけです。
(2017.9.8)