劣等感が理由にもなる

 野口健『あきらめないこと、それが冒険だ~エベレストに登るのも冒険、ゴミ拾いも冒険!~』(学研2006.6)によると、野口健氏が山登りをしようと思ったきっかけは、一冊の本にありました。植村直己さんの書いた『青春を山に賭けて』という本です。

 それはたんなるサクセスストーリーではなかった。人のやれない冒険に成功した偉大な立派な物語、といった内容ではなかったのだ。その話は、「落ちこぼれ」から始まっていた。植村さんは人生の最初、いろいろなことがうまくいかなかったらしい。それでコンプレックスを感じて、悩む日々が続いた。自分は人より劣っている「落ちこぼれ」だと思って、放浪していた。それが山登りをすることによって突破口を見出し、世界的な冒険を成功させることによって自信をとりもどし、ついに自分の世界を社会に向けて確立したのだ。
 植村さんは本の中で、「自分は人並み以下の人間だ。それで、人ができないことをやろうと思った。人ができないことをやることによって、ようやく自分は人並みになれるのだ」というようなことを書いている。ぼくはそこにジーンときてしまった。

 劣等感を克服するために、植村さんも野口さんも山登りを始めたわけです。
 山登りをする理由の中で、劣等感の克服にしろ、清掃活動にしろ、子どもの中からは出て来ません。だからこそ、授業の価値は高くなるのです。

(2009.6.28)