母乳語と離乳語

 外山磁比古『わが子に伝える「絶対語感」』(2003.11飛鳥新社)より。

 ことばとは、一種の記号です。言い換えれば、ものごとをことばに結びつける約束が、ことばの体系をつくり上げているのです。(中略:荒井)
 母乳語は、まず、この結びつきの約束を覚えることから始まります。たとえば母親が、イヌを見るたびに「ワンワン」ということばを語りかければ、こどもの脳には、ワンワンということばが刷り込まれます。そして、そのうちに、イヌという動物と、ワンワンということばが結びつくようになります。これが、ことばを覚えるということです。

「母乳語が表すことができるのは、具体的なものごとに限られる」とも外山氏は書いています。では、目に見えない抽象的なものごとを表すのは何語でしょうか。

 母乳を飲んでいた子がやがて離乳するように、母乳語を与えられていたこどもは、やがて、抽象的なことばの使い方をする離乳語へ切り換わらなくてはなりません。もちろん、ことばの離乳は、実際の離乳と違って、離乳したあとも、母乳語と離乳語の二つの種類の言語をともに使い続けるという特徴があります。

「離乳語への移行が、きちんと行われていない」と外山氏は考えています。
 低学年の学習は、具体的な、要するに母乳学習といえます。
 それが中学年、高学年となれば、離乳学習に切り替える必要があるのです。 

(2017.12.29)