憎まれ、敬われるオオカミ

 高槻成紀「オオカミを見る目」は、道徳の授業づくりに使えそうな説明文です。
高槻氏は、ヨーロッパでは「オオカミは悪を象徴する生き物とされ憎まれてきた」のに、昔の日本では「神のように敬われていた」のは、なぜか。と問題提起しています。

 ヨーロッパの農業は、麦を栽培し、ヒツジを飼って営まれてきました。当時の人々にとってヒツジは生活の糧でした。そして、まだの村の周りに森が残っていた時代には、森にすむオオカミがヒツジを襲って殺すことがよくありました。

 ヒツジが襲われることから、オオカミは憎まれたわけです。一方、昔の日本は、

日本は米の国といっていいほど稲作の盛んな国です。人々は汗水垂らして米作りに励み、豊作のために祈りをささげる毎日を過ごしてきました。そうやって心血を注いで育てた稲が台風でだめになったり、イノシシやシカに食べられたりしたら、人々はどう感じたでしょうか。

 米を食べるイノシシやシカを殺してくれるオオカミに、昔の日本人は感謝し、敬ったわけです。

 このように、人の考えや行いは、置かれた社会の状況によって異なりもするし、また変化もし得るのだということを、心に留めておいてください。

 オオカミ以外の例をもう2つほど用意すれば、授業化できそうです。

(2018.1.30)